キイ、と小さな音をたててブランコが揺れる。雨が降る公園には私以外誰もいない
傘もささずにブランコに座る私は既にずぶ濡れで、最初は不快だった肌に張り付く服ももう気にはならない。ただ胸が痛むだけ。
「‥‥失恋した時ってこんなダメージ受けるんだ‥効果は抜群だよ‥」
そう、私は失恋したのだ。 5年間の片思いは儚く散った
「恋人‥いたんだ‥」
私の好きな人には既に恋人がいた。 間違いない、私は見てしまったのだ‥ 好きな人のキスする場面を、
「‥‥‥勝てないや、」
綺麗な茶髪、端正な顔、そしてノリが良くて優しい性格‥
「ははっ‥あいつが選ぶのもわかるなあ、優しくていい人だったから」
「なにやってんだよお前」
突如、私に雨があたらなくなった。 代わりに呆れた声が頭上から聞こえる
「‥‥‥ヨシタケ、」
私が濡れない理由は幼馴染のヨシタケが私に傘を傾けていたからだった
「探したぞ、お前に話あって家行ったのにお前いねぇし」
「‥そう」
「あーあ‥ずぶ濡れじゃねーか」
正直、会いたくなかった。今は特に 私が好きだったのは私の目の前にいる幼馴染なのだから
「風邪ひくぞ」
「‥‥‥なんで、来たの?」
「話あるって言ったろ」
付き合ってる人がいることを私に報告するの?ヨシタケが好きな私からすればそれは処刑に等しいんだけどな
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
わかってる。私にはどう足掻いても勝てない相手で、でもまさかヨシタケにそんな趣向があったなんて、でも‥その問題で私に勝ち目がないのならいっそ、
「‥性転換したい」
「はあ!?」
「性転換する」
「ちょ、待てよ!なんの話?なんで急に性転換するとか言い出すのお前?」
「失恋したから」
「失恋で性転換!?斬新だな!!ていうか失恋ってなんだよ、お前好きな奴いたの!?」
「‥うん、その人に好きになってほしいから男になる。」
「おい、話が追いつかねえよ!」
ヨシタケはパニクってる。でも私は決めたんだ。ヨシタケに好きになってもらうために男になる
「誰だよ愛をそこまで追い込んでる奴!俺がぶっ飛ばしてやるから性転換とかマジ考え直‥どうっ!」
「おめーだよ!」
「は?」
私を追い込んでる奴をぶっ飛ばすとヨシタケが言ったので、とりあえず私は元凶のヨシタケを殴っておいた
「私を追い込んでる奴はあんたよ!」
「‥は?な、なに?」
「知ってるんだから!あんたがヒデノリ君とキスしてたこと!」
「‥‥ヒデノリ、キス‥?」
「朝の往来で堂々と路チューしやがって!相手が男なら女の私に勝ち目ないじゃん!だから私は男になる!」
「ちげーよ!お前、あれだろ?今朝のあれ見たんだろ?」
「‥‥‥‥‥」
「あれは蜂がいたんだよ!」
「意味不明」
「蜂がヒデノリの口に止まってパニクったヒデノリが俺に突進してきたんだよ!」
「信じらんない」
「大体、俺は愛が好きなんだよ!なのに愛、性転換するとか訳わかんねえこと言い出すし、というか今日俺がお前を探してたのはコクるためだったんだよ!」
「‥‥は?」
「だから性転換とかすんな」
「‥‥‥ヨシタケ、ヒデノリ君と付き合ってるんじゃ‥」
「バーカ。俺は中学ん時からずっと、お前が好きだったんだよ」
「‥‥‥‥‥‥」
私を真っ直ぐ見るヨシタケの顔は赤い それに嘘ではないと気付いた
「つか‥なに、じゃあ‥愛‥俺がヒデノリと付き合ってるって思って性転換とか言い出したのかよ?」
「‥‥ヨシタケは‥男が好きで、だから私も男になれば可能性あるんじゃないかって思った」
「‥‥‥怒んねえ?」
「なにが」
「言っても怒ったりしねえ?」
「発言による」
「めちゃくちゃ嬉しいわ。愛、そんな俺のこと想ってくれてたんだな」
「‥うるさい」
「好きだ」
「‥‥バーカ、私のが好きだし」
「ほら、帰ろうぜ」
差し出されたヨシタケの手を握る。そして手を繋いだまま、歩き出した
さっきまであんなに冷たかった雨が 今ではなんだかあたたかい
「もう傘意味ねえな」
「私もヨシタケもずぶ濡れだもんね」
ヨシタケの笑顔に、私も自然と笑みがこぼれた
紛らわしい君と僕 事実はちゃんと確認しようね
ヨシタケ夢ですが甘いかな いい加減、悲恋とか書いてみたいな
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