02
「なぁ、黒いのに紫のっ!起きろってば!」
「…ぅ」
顔をぺちぺち叩かれる。
少女の声…?
…まさか、ここは!?
「…みんなッッ!!」
正しくここは海賊船の上だった。
テッドやゼファー、ゴーイチおじさんは太い柱に縛りつけられて無力にもがいている。
あの時、俺が海へ飛び込んだ後…一体何が起きたんだろう。
そして、目の前の幼い少女は…?
「……もしかして、人質!?」
少女は目を丸くする。
「…ハ?」
そうだ、きっとこの子は人質で捕まっているんだ。
可哀想に…。
…よし、この子を連れて皆で逃げよう!
「さぁ、早く!みんなで逃げるんだッ!!…大丈夫か、君。怪我は?痛いところとかは?よく耐えきれたな、でももう大丈夫だ、俺らで君を助けてやるから…な?」
「…あたし、船長だけど」
少女は自慢するように怖がらすように鼻を高くして、そう言う。
ノエルは恐れをなすどころか
目をキラキラうるわせて少女の肩を揺さぶる。
「そう言い訳をしろって言われてるんだな…さぁ、早く俺の背中に…」
バキューンッ!
空の彼方にピストルの発射音が鳴り響き、ノエル一同は肩をビクリと振るわせる。
「コルト・パイソン」
先ほどより一層恐い顔つきで腰の抜けたノエルを見下して言う。
吹き出た煙をふっと消す。
「357口径の大型リボルバー。優秀なマグナムだ……でもその分欠点もある。トリガーを引く時の重さが一定じゃないからシアが外れるタイミングが分かりにくかったり、発射ガスが射手に吹き付ける量も多いから火薬滓などによる火傷、怪我の危険性も高い」
ノエルは目を大きく見開いて瞬きをして思う。
こいつは本当の゙海賊゙なのだと。
「さぁ、答えろ!あたしらの大事な物を盗んだ奴は誰だ!」
まだ気を失っているフィアの頭部にマグナムを突きつける。
「誰も嬢ちゃん゙らの大事なもんとやらは取っちゃい゙ねェよ゙」
ゴーイチおじさんはついに自分達を縛る縄にかじりついている。
「確かにあんた達の船へ飛んでいったんだ!間違いはないぞ!!」
「いいや、君は間違ってんだよ!何かの勘違いだ!」
すぐ近くのフィアを助けようにも目の前に銃を手にする少女がいては自由もきかない。
不用意に動けばフィアが危ない…。
くそっ…どうすればいいんだ……!!
「十える前に答えな……十、九、八、七……」
「嬢ちゃん゙!!」
「やめろ!!」
「五、四、三…」
フィア…ッッ!!!
「二、一…「待ってくれっ!私…かも、しれない」
カウントを止めたのは難しい顔をしたゼファーだった。
「てめェッッ!」
テッドが今にも殴りかかりそうな勢いでゼファーに押し寄せる。
「ほう?あんたか」
少女はニヤリと笑って、ゼファーをギロリと睨み付ける。
「船上で空を眺めていたら紙が顔面に飛んできてな、宝の地図らしき物だったから持っておいたのだ……確かここに…」
少女は目を見張る。
が、ゼファーの漁るマントの内ポケットからは何ひとつ顔を出さない。
「もしかして…」
「ないの、かっ?」
「…青年さんよォ゙」
ゼファーが青ざめた顔を上げる。
「……………ない」
マグナムの発射音がけたたましく二発、鳴り響いた。
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