01
空の色が薄暗く変わってきた頃だった。
一人で空を仰いでいるフィアにかける言葉を探っている時、遠くの方で突如、大砲が鳴り響いた。
ドーンッ!!
一目散に操縦室から飛び出して来たテッドは双眼鏡で遠くの方を見やる。
「大変だ!」と口にして再び操縦室へ駆け込む。
「なんだとォ!?」
ゴーイチおじさんはいつにも増して大きく掠れた声を張り上げる。
ノエルやフィア、ゼファーは何があったかもわからずに、ただ混乱しきっていると、はたまた忙しそうにテッドが操縦室から出て来て言う。
「海賊だ!早くこっちへ…」
テッドが言い終わるが早いか遅いか、大きな大砲が勢いよく船に命中し船は大きく揺れる。
ノエルはフィアを支えてやるとテッドに告げた。
「船を降りた方がいいんじゃないか!?」
ゼファーが微かに顔色を青ざめさせているのが分かった。
もうこの小さな船は、ゆらゆらと今にもバラバラになってしまいそうだ。
このままでは船は遅かれ早かれ沈没してしまうに決まっている。
次の大砲がきたら海へ飛び降りる覚悟で構えていたノエルら。
しかし、大砲が飛んでくる気配はないに等しく。
ぽかんと不思議そうに口を開いている。
「そこの小船ーっ!!直ちに船を停めろ!そうすれば、こちらからは何もしない!」
代わりに少女の声が聞こえてくる。
「そんな訳がねぇ…!」
テッドは唸ると声を張り上げた。
「あいつらは海賊だぞ!俺らを取っ捕まえて下っ腹にさせるつもりだ!!」
操縦室のゴーイチおじさんも同じ気持ちなのか船の今ある限りの質量で前進させている。
船は…ノエルたちは今、最大の危機に陥っているのだ。
海賊船から逃げ切れるのか…。
「小船!停まれと言っているだろうッッ!!」
その間にも少女の怒鳴り声が絶えることはなく。
ドーンッッ!!
そして先ほどの炸裂音が鳴り響いた時、船はついに大きく傾いた。
ノエル、テッド、フィア、ゼファーにゴーイチおじさんは呆気なく海に放り出され。
船は沈没した。
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