08








「まぁまぁ、ノエルちゃんにお嬢ちゃんよォ、今日は遅ェんだ、とりあえず泊まってけや゙」

ゴーイチおじさんは二人の間に割って入って、肩を組む。
ノエルは俯いていた顔を上げると安心した様に微かに笑った。









「私はテッドの母のエマよ。宜しくね、フィアちゃん。こっちは夫のゴーイチ」

「フィアちゃんってェのかい!いい名前だなァ!!がははははッッ」


ゴーイチおじさんは顔を真っ赤にして、ぐびぐびっとビールを豪快に飲む。




今は俺とフィア、テッドにゴーイチおじさんにエマさんとでテーブルを囲んでいる。


魚のムニエルやロールキャベツ、野菜サラダなどが彩りの花畑になって並べられ。

テッドは普通に食べているが、俺にとっては「ごちそう」にしか見えない。



「この魚ね、ここの海で捕れたものなのよ」


エマさんは口一杯に「ごちそう」をほお張ったノエルを嬉しそうに眺めて言う。

夢中になって食べている彼には聞こえているかも知れないが…。




「おい、骨あんぞ」


「…ごふっ…げほげほッッ!?」



食卓には賑やかな笑い声が響く。

ノエルが水を飲んだのとゴーイチがビールを飲んだのが重なって「「ぷっはァ〜」」何てハモってしまっている。


再び先程よりもハイボリュームな笑い声が響いて、ノエルは顔を赤く染める。




「がはははッッ!何だ、ノエルちゃんのは酒かァ゙??」

「ちがうちがう〜」

「貴方、酔っ払いすぎですよ」



隣のフィアを横目で見ると少しだけ可笑しそうに笑っている。

俺は、ほっとして水を一杯飲む…?うん…?



「ん゙?俺のビールがねェ」


「あらっ、ノエルちゃんそれ!」




「…へぃ??」

……嗚呼、何か急に身体が熱くなって…



バターン










「…う……ん」


「ノエル、起きましたね」


まだ、ぼうっとする視界の中にいるのはフィアだった。

……そうか、俺はあの後…




「ビール一杯で酔っちゃうなんて可笑しいです」


女に言われると何故か、きまり悪いんだよな…。

俺、もーすぐ20歳なんですけど…。
デリケートって言えよ!



でも、何でもないように話かけてくれて少しだけ安心したかも。

俺がいけないのは分かってる。

でも、潔くハイハイって家に帰るのは納得いかねぇ。
…だって、教えてくれない方にも問題はあるだろ?



「俺、明日帰るよ」

「はい」

にっこり笑って微笑んでくれる。
…俺に、俺だけに向けてくれた笑顔。



「…わがまま言ってごめん」


「いいえ、ノエルなら考え直してくれるって思ってましたから」


素直に微笑んでくれるフィアの前には、
素直に謝れる、俺がいたんだ。


俺、きっと。
フィアを困らせたことを
後悔しているんだ。

だって、こんなに胸が……




痛いんだもん。






「…そういえば、テッドは?」


「ああ、さっきゴーイチさんに明日まで船の監視してろって。家を出て行きましたよ」


「えぇッ!も、もう夜なのにィ!?」



ガチャッ



「ノエルちゃんにフィアちゃんよォ、これで邪魔者はい゙なくなったぜ」


やっぱ、凄い人だ、
この人は…。



「だから鍵閉めてもよかったのによ」

「「閉めませんッッ」」









電気が消される。


明日はいつものように帰って、きちんと謝るつもりだった。




―それなのに、あんな悲劇が起こるなんて予期せぬことだった…。






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