07









「ここらじゃ見ない顔みてェだし、少しゆっくりしてけよ。変な奴ら居るけど」


「すみません、じゃあシャワーだけ…」




確か、テッドさん―って人だっけかな―探してるのに

私、またやっちゃった…。






廊下、フィアの歩いた跡を表すように、海水がぽたぽたと垂れていく。



「誰か来たのか?」

聞き覚えのある声。
…まさか。



その声の主がひょっこりと姿を見せると、二人とも固まってしまう。



「ノエル…!」

「フィアじゃんッ!」


そう、やはり聞き覚えのある声の主は、先程家を出ていったノエルだったのだ。



「なんだ、知り合いか?」


「いや、知り合いというか…」

「…はあ」


「…何だよ、二人して。なんか複雑そうな関係だな」


フィアは思い出したように、はっと顔を上げ、訪ねる。



「え、じゃあ、この方が…テッドさん?」


「…そうだけど」


やっぱり…!
よかった、すごい偶然だった様な気がするけど、結果オーライ…?



私ってつくづく運の良い人間だ、と海に落ちて思うフィアであった。

カラスに笑われたのは悔しいけど…。




「とりあえず、体洗ってこいよ」

テッドはフィアを急かして風呂場に導く。


「…じゃあ、お借りします」



脱衣場の古く重い扉が、ガラッと閉まる。



「きゃあッッ!?」

ワンテンポ遅れてから風呂場には金切り声が響く。



「どうした!フィア!?」

急いで駆けつけたノエルとテッドの見た光景は…





「な、何やってんだ親父ィ!!」


真っ暗な風呂場のただ一点だけ青く光る湯船。

のんきに上を向いて眠っているゴーイチおじさん。




「…バカンスか?」

その何とも言えぬ光景にノエルも呆れてしまう。




「…ん゙ぁ?」

間の抜けた声を発して、まだ寝ぼけながらも目を覚ます。


「何してやがるっつってんだよッ!!」

「見りゃわかんだろォ。隣街で買った湯船用快適ランプ使ってんのよ」


湯船のお湯の下敷きとなったランプは青から水色、水色から黄緑、黄緑から緑…と様々な色のグラデーションで変化していって、見ていれば確かに快適だ。




さっきから背を向けて肩を強張らせているフィアにゴーイチおじさんは気が付くと口笛をピュウ、と鳴らす。


「彼女サンかなァ、ノエルちゃん??」

「違うって!」




「ッてか、こんな真っ昼間に風呂入ってやが…「テッドォッッ!!!」

テッドは少しビクリと肩を震えさせ「な、何だよ!!」と問う。



「ここ、出てってやれや」

「…はぁ?何言って…」




「風呂、入りずれェだろ」

無精髭を弄りながらニヤニヤ顔のゴーイチおじさん。




暫くの沈黙が流れる。





「くそ変態加齢臭親父がァァァァァァアアアッッ!!!」










「ごめんなさい、着替えまで用意してもらって…」


一回り大きいサイズのパジャマを来て出てきたフィアは、はて、と首を傾げるて「でも…パジャマ?」と呟く。

今日はノエルを家に帰らせる為に来たのであって…



「あ、フィア。俺、今日泊まってくから」

「…え」


「勝手に事を進めやがって」

やれやれ、と呆れ顔のテッドだが、もう止める気はないらしい。



「だ、駄目です!ウォルバさん、心配しちゃいますよっ」


「だってよ、ノエル」




「心配なんて、してねーよ」

俯いている。
さっきのへらへらした顔とは全く裏腹に。

でも…


「ノエル」

「知らねぇよ、人の両親のこと一切教えてくれねぇ奴なんて…」

「違います、ウォルバさんはっ「今は!」



「今は…顔、見たくねぇの」


すごく気まずそうな顔で言うから…だから、言い返すこと、できなかった。

実際、訳ありな事情だったみたいだから…どうしてとか詳しいことも聞けなかったし…。

…聞いちゃいけないんだって思った。
私が知ることじゃないんだって。




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