04






「…監視なんてする方が」


だいいち、ここは俺の家なんだし。
二人のことを考えて出した結果だ。
あいつのことだから、
どうせ戻って来るだろうけど…。




ガラリと寂しくなった倉庫は静かに息を殺している。




「大丈夫、ノエル?」


「ウォルバさんが」と言って手にしていたレモネードをノエルに渡す。
暖かい湯気が薄暗い倉庫に舞い上がっていく。


(……熱)

出来上がったばかりのレモネードは甘くて酸っぱくて、熱かった。

ウォルバおばさんはよく「疲れがとれる」とか言って作ってくれるけど、あんまり好きではない。



雲が空を覆う。
今にも一雨降りそうな天気だ。


何を話せばいいのか分からなくて「降りそうだな」とだけ呟いておいた。





「ゼファーさんのこと、気にしてるんですか」

決め付ける様に不意をつかれたので、思わずブッと吹いてしまう。



「…全然悪い人に見えないけどなぁ、私」


「………何かさ、信じらんなくなっちゃって。急に」



あの不気味な本といい、奴といい…。
何か…何かが起きそうな、
そんな気がしたんだ。



―あいつがあんな顔するから…。

『その話、誰に聞いたのかな?』





「信じられない、ですか…」


「…ん?」


「…ノエルは、何も聞かないんですね。私のこと」



…急に何を言うんだ。
記憶がないのに聞けるわけがないだろう。

それに…



「知りたくないのでしょうか」


「…え」


「私も、知りたくない。でも自分のことだから…」



嘘だ。

俺はフィアのことを知りたくない…?





「……俺、両親のこと…知りたく、ない」


何言ってんだよ。
両親のこと知りたくない子供がいるかよ。

何言ってんだよ、俺…!


「……」



ああ、きっと雨が降ったんだな。
…ここの倉庫、すごく狭っちいから、プールになっちまったんだ。

…だって、濁ってんもん。


視界。




「ノエル、私と貴方は似た者同士ですね」

ノエルの頬に伝った"雨粒"を手で拭いてやる。










「…なぁ」

「なんだい?」

「……あのさ」

「…なんだい」



「…俺の両親のこと、教えてくんない?」

「……ノエル」



「んー…無理だね」




「へ?」





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