07
今日の夕食はテーブルに並ぶ椅子が一つ多い。
「家には入ってくんなっつったのに何で堂々と居るんだよ!!」
「いいじゃないか、うちも賑やかになってきたねぇセオ」
「うんっ」
「宜しくお願いしますね、ゼファーさん」
まるで掃除機の如くテーブルに乗せられた料理を次々と平らげるゼファーはノエルらの言葉すら聞こえていない。
「てか、迷惑かけないとか言っといてかけまくりじゃねぇかよ!」
「でも、とても良い人じゃないですか?」
「良くない!」
「お嬢さん、貴女は私を分かっておいでですね。貴女はとてもお美しい、華も羞じらうくらいだ。この上なく大きな瞳にさらさらな髪の毛、ああ…あと3,4年早く君が生まれていたら、私と君は本当の意味で結ばれていたのに…神はなんて愚かで残酷な生き物なんだろう、私達をこんな運命で出会わせたなんて…フィアくん、神を憎むんだ…私は悪くないよ、それに…」
口元にご飯粒をくっつけながらペラペラと途切れることなく話し続ける。
この男はよくもこんなに早口で呂律が回るのだろうか。
フィアはさすがに苦笑をして話を聞いている。
「…そして当たり前の様に寝てやがる」
ソファの上で大いびきをかきながら眠っている。
本当に馴れ馴れしいんだか警戒心というものが備わっていないんだか…。
ここ2,3日で生活がぐるりと180度回転したように思う。
奴の言っていた「神」が仕向けたんじゃないかな、と考えてしまう程だ。
何の目的かも分からない奴をずっとは置いておけない。が、やっと俺を監視してた輩を取っ捕まえたんだ。以外とすんなり。
もう、好き勝手なんてさせないぜ。
「明日には出てけよ」
「ノエル、見とくれ」
ウォルバおばさんは外から帰って来ると大きな袋を見せつけた。
「倉庫を整理してたら見つけたんだよ」と嬉しそうに。
「あ」
「おかしいねぇ、こんなに買いだめした覚えないんだけど…」
「…げほげほっ…げほっ」
「…セオ、どうしたんだい?」
扉の向こうから聞こえる、おばさんの声。
「ううん、ちょっと眠れなくて…お休みなさい」
…大丈夫、いつもの風邪。
明日になったら良くなる。
―そう、もうカウントダウンは前から始まっていた。
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