幸せの意味
なかなか答えが出ない奈々詩に対して三成は、そんなことかと言って息を着いた。
「そ、そんなこと、とは…?」
今までで答えが出なかった奈々詩は三成にすがるように両手で彼の振袖を掴んだ。
「本当は分かっているのではないか?
秀吉様とおねね様のお気持ちを」
その言葉を聞いて奈々詩はドキリとなる。
驚いた表情で三成を見やれば、彼はやはりと言わんばかりに奈々詩を見つめた。
彼女の両手は三成の振袖から力無く落ちた。
「だ、だって、私は秀吉様とおねね様のお役に立ちたくて…、それで見合いの件を受け入れて……」
混乱した奈々詩は頭を両手で抱えてその場にしゃがみこんだ。
三成もしゃがみ、奈々詩の背中を擦って気持ちを落ち着かせようとした。
「秀吉様とおねね様は…奈々詩、お前には本当に幸せになって欲しいとよく話されていた」
「………」
奈々詩はうつむき、目に涙を溜めるとポロポロと雫を流した。
三成はそんな奈々詩の頬を両手で包み込むように優しく触れ、顔を自分の方に向けた。
「それに、幼い頃から知っているお前をどこぞの輩に渡したくはない」
奈々詩の視界は滲んだまま前を見つめていると、三成の顔が近づいてきた。
彼の顔が斜めになったかと思うと自分の唇に何かが当たった。
それが三成の唇だと分かったのは数秒たってからだ。
「みつ、なり、さま…?」
「俺はお前を好いている。ずっと前からな。
今日はお前の見合いの件を聞かされて驚いた」
嗚呼、宴の時の彼のあの顔が頭から離れない理由がやっと分かった。私も彼が好きなのだと。