好奇心からの出来事


司馬懿が奈々詩の唇にそっと触れてから顎を持ち上げた。
口つけされるのだろうと、奈々詩は司馬懿の顔を見て恍惚し、目を伏せてその行為を待つ。けれどもいくら待ってもそれは訪れなかった。
不思議に思いながら伏せていた目を上げると、司馬懿はまた意地悪そうな顔をしていた。

「したいならば自分からするんだな」

ここまで甘い雰囲気を作りながらも司馬懿は自分からすることはしなかった。
期待していた自分が恥ずかしいと思うと、彼の目がじっとこちらを見て何かを訴えている。

口つけをしろ、と。

手を解放された奈々詩は両手でおそるおそる彼の顔に向かって手を伸ばす。
司馬懿の顔の横をすり抜け、後頭部を優しく支えると自分の方に向かって少しずつ力を籠める。
彼の顔は少しずつ近づいてくる。
そっと司馬懿の唇に自分の唇が触れると力を籠めていた手を緩めて離れようとするが、司馬懿がそれを許さなかった。
少し浮いた奈々詩の頭と椅子の間に手を強引に入れて彼女を捕らえると手に力を籠める。
離れそうだった唇を再び合わせ、先程よりも深く口つけた。

端から見れば強引な口つけにも見えるが、彼の口つけはひどく優しい。
司馬懿は、わざと音を立てて離れる。その表情は至極満足そうだ。

「口つけとはこうやるのだ」

「司馬懿様のは少し違う気がします…。そ、それより、お仕事はよろしいので!?」

「……お前は私に過労死してもらいたいらしいな」

奈々詩がそういう意味で言う訳がないのに司馬懿は意地悪く言ってみせる。

「違います!そんな…私、司馬懿様が死んでしまったら……」

「な、泣こうとするな馬鹿め!冗談だ!
ただ、もう少しお前とこうして傍にいたいのだ……」

そう言いながら司馬懿は奈々詩の上半身を起き上がらせる。
滅多に自分から甘い言葉を言わない司馬懿に奈々詩は嬉しくなり頬を染めると、彼にそっと寄りかかる。
そして二人は暫く休憩を取った。



...終...


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