似た者同士


「………まつ?」

「…読めぬのか。日頃から字を読むことをしないからこうなるのだ」

「だ、だってこの字が汚いんですもん…!」

頬を膨らませて三成を見やる奈々詩。
やはり“佐吉”とは子犬の名前が分からない彼女が勝手に付けて呼んでいたようだ。
はぁ、と溜め息を吐いて三成は奈々詩の抱えている子犬の首輪を見るために屈んだ。

「………まつ?」

「ほら!やっぱり読めませんよね!」

彼の共感を得られた奈々詩は顔を緩ませた。
三成は彼女よりも字や文には長けていたので“汚いから”を理由に読めないのが少し腑に落ちない。
しかしこうなっては少ない情報で子犬の飼い主探しをするしかなかった。
その時、奈々詩は閃いたように三成に言う。

「“まつ”って飼い主の名前を一部取ったとかじゃないですか?
でしたら身近にいますし、大坂城内で迷子になっていたことに結びつきます!」

奈々詩はそう言うが三成は当てが全く思いつかなかった。
なので彼女の次の言葉を待つことにした。

「正則様ですよ!幼名は市松でしたし!」

「……あいつがか?」

「顔の悪い人と子犬は定番じゃないですか?」

はぁ、と三成はまた溜め息をつく。
あの正則が…そう想像しただけで気分が悪くなる。

「無いだろう」

「やっぱりそうですね…」

三成がきっぱりと言うと奈々詩も同感した。
彼女も何かを想像したようで顔色が悪くなっていた。
当てが無くなった二人は立ち尽くす。
すると大坂城の門から幸村と兼続がこちらに向かって歩いてきた。



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