似た者同士
快晴の広がる空の下。
大坂城の敷地内で、人の声がする方へ三成は足を進める。
「よしよし。佐吉はいい子ねー」
三成の幼名を知っている者は限られている。
彼がその場に行くと子犬を抱えた奈々詩がいた。
奈々詩は三成を見つけると、はっとして、それから顔を赤らめた。
「み、三成様…帰っていらしたんですか……」
分が悪い奈々詩は俯きながら、先程“佐吉”と呼んだ子犬を撫でた。
色々言いたいことがあったが、三成が一番気になったのは何故子犬がここにいるかだ。
「子犬は拾ってきたのか?」
などと意地悪く冗談を言ってみる。
そうすると奈々詩は三成を見るが、すぐに目を伏せた。
どうやら本当だったらしい。
三成は一瞬言葉に詰まってしまった。
「一体何処で拾ってきたのだ…。元の場所へ返してこい」
「そんな!ま、待ってください!
この子首輪が付いてるんです。せめて飼い主が見つかるまでどうか…!」
そう言うと抱えていた子犬をぎゅーっと抱き締める。
それから三成を見る奈々詩の目は懇願に満ちていた。
そんな彼女に不覚にもときめいてしまい、表情には出さないようにたじろいだ。
「だいたい当てはあるのか」
あっ、と気がついたように奈々詩は子犬の首輪を見た。
小さい板があり、そこに何か書いてあるようだ。