幸せの意味
夜も更けっている中、中庭に奈々詩の姿があった。
「幸せってなんでしょう…?」
中庭の隅に咲いている彼岸花に向かって、奈々詩はぽつりと言葉を投げ掛けた。
返事が返って来ないのは分かっている。
自問自答させるかのように言ってみたが、答えはまるで見つからない。
見合いをすることが決まって、やっと秀吉の為に役に立つと思った奈々詩は嬉しかった。
はずだった。それがどうだろう。
秀吉、ねね、秀吉の子飼い、左近と祝いの席をし始めてからは気持ちがひどく沈んでいる。原因は自分でも分からない。
もしかしたら、だ。自分は此処から離れたくないのではないかと思った。
秀吉様とおねね様と離れたくない。
だがそれは見合いの件が決まる前からあった感情。
なら、この胸にぽっかりと空いたのは一体なんなのだろう。
「奈々詩…その様な所で何をしている」
「あ、三成様…」
奈々詩が振り替えれば彼がいた。
祝いの席の時にねねが奈々詩の見合いが決定したことを話したら一番驚いていたのが三成だったなと思い
軒の下にいる彼は手招いていたので奈々詩は彼の元まで行き、草履を脱いで軒の下に入っていった。
そして、三成が片方の手の甲で奈々詩の頬に触れた。
「何をしていた。冷えているではないか」
三成はそうぶっきらぼうにそう言って、自分が羽織っている羽織を奈々詩に着せた。
羽織は三成の体温が残っていたので、その温かさを感じて少し顔が緩む。
「有り難うございます。その、少し…考え事をしていました……」