呼んで
それでも彼といる時間はとても幸せだった。
「趙雲って凄く呼びやすい名前よね!応援する時も言いやすいわ」
ちょーうん!ちょーうん!と少し間抜けな呼び方を奈々詩は繰り返す。
趙雲は微笑んでくれたが、少ししてから顎に手を当てて少し考える。
「では、子龍はどうだ?」
「ちょー……え?」
突然そう言われたので奈々詩はきょとんとして彼を見る。
趙雲は顎に手を当てるのをやめて再び微笑む。
「子龍は呼びやすいだろうか?」
「えっ…と、あの……し、子龍も呼びやすいと思う」
まさかこんな形で趙雲の字を呼べるとは思わなかった。
彼の字をぽつりと言うと顔を赤らめて俯いてしまった。
趙雲はというと、満足そうにしている。
「なら奈々詩。今度から子龍とも呼んでくれないか?」
「え、いいの?あ、う……し、子龍がそう言うならそう呼ぼうかしら!」
子供のように顔を緩ませたが、はっとしてまた大人びた口調に戻す奈々詩にくすりと趙雲は笑う。
やっぱり彼の方が大人びて見えて少し悔しかった。
...終...