ゼロセンチ


少し強くなってきた雨。
目的地に着くとやはり彼はいた。
鍛練をしているわけでなく、木の根本に背中を預け座り込んで小川を見つめていた。
そんな彼にスッと自分が差していた傘をかざす。
自分も濡れないようにと傘に入っているので自然と距離は近くなる。

「馬超様、風邪引いちゃいますよ」

そう言いながら懐から布を取り出すと、雨で濡れている彼の頬を軽く拭く。
木の下にいたのでさほど濡れてはいない様で少し安心する。

「奈々詩か。こんな所まで来てもらってすまないな…」

いつもとは少し様子が違う馬超に戸惑っていると突然、腕を引かれて彼の胸板に頭を預ける形になった。
傘はその場に落ちてしまう。

「ばば馬超様!?」

「俺は今、幸せ者だと言うのを…その、実感したくてだな……」

期待をしてしまう彼の言葉に尚更ドキドキする。
だが身分が違い過ぎる上に、彼はただ迎えに来たことに喜んでいるのだと。
間違っても勘違いするなと自分に言い聞かせる。

勝手に舞い上がるとはなんて恥ずかしい女なのだろう。
彼はきっとそんな気は全く無いのに。



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