戸惑い
「奈々詩殿。それって期待してもいいの?」
「期待…ですか?」
奈々詩は首を傾げて馬岱を見上げる。
また二人の目が合うが、顔をほんのり赤くした奈々詩が、はっとして目を反らす。
ずっと前から気になっていた彼女。その様が堪らなく可愛く感じた。
「奈々詩殿ってば可愛いよぉ!
あー、書簡さえ無かったらぎゅってしたのになー…」
「か、からかわないでくださいよ」
「ははっ。でもさ、俺は本気の本気だよ?奈々詩殿はどう?」
奈々詩の行く手を遮るように馬岱は彼女の前に出て顔を除きこむ。
こんなに真剣な彼の顔は初めて見たので奈々詩は目が反らせなかった。
そんな彼女の顔に向かって馬岱は手を伸ばす。
どきどきどきどき、と心臓がうるさいくらい鳴っている。
スッと自分の頬に彼の暖かい手が触れる。
それだけで息が止まりそうな気さえした。
「ほら、俺が頬に触れただけで真っ赤だよ。
それとも誰にでもこうなるの?」
趙雲や馬超に頭を撫でてもらったり、馬岱と同じように頬に触れた時もあったが、こんなにどきどきはしなかった。
「ち、違い…ます……。その、わ、私は馬岱殿の事が…好き、なのかもしれません」
思えば彼の誰にでも分け隔てなく接する様が苦手なのは嫉妬だったのかもしれない。
そう思えば思うほど顔の熱は高くなる。
「俺もね、ずっと奈々詩のこと見てたんだよ」
こつんとお互いの額が合わさる。
にっと馬岱が笑うとそれにつられて奈々詩も笑う。
想いが繋がるのはお互い初めてなので幸せで幸せでたまらなかった。
...終...