※学パロ。短めです。


「ひとくち」

そう甘えた声でねだられるのと同時に、伸びてきた指先がペットボトルをさらっていった。
唇が飲み口に触れ、白い喉が数回上下する。

「あ、これ結構おいしいね」

ごちそうさま。
そう悪びれもなく笑みを浮かべたハオは、さらったときと同じくあっさりとペットボトルを葉の掌に返してきた。
暫くの間、ぼんやりとその飲み口を見つめる。
自分だって飲みたくて買ったのだ。喉は渇いている。
けれど改めて口を付けようとする度に、脳裏を掠めるのはペットボトルに触れた柔らかい唇だった。

「……よう?」

「飲まないの?」と無神経に問い掛けてくるハオの頭を、力いっぱいひっぱたいてやりたい。
"柔らかそうな"唇ではなく、"柔らかい"唇と予断ではなく事実としてその感触を反芻した自分の頭も、ついでにひっぱたいてやりたかった。

「……なぁに、もしかして間接キスだなーとか考えて照れてるの?」

キスもそれ以上も僕といっぱいしてるのに。
そう悪戯っぽく続けたハオのにやけた顔を、今度は考える間もなく叩いていた。
ぺちん、と軽く響いた音から、その威力の程度はたかが知れている。
解っていてわざわざ口にするのだから、ハオも性格が悪い。

「よーう」

甘えた、それでいて甘やかす様な声音。
ぶすくれていた葉がその声で反射的に顔をあげると、そっと唇が重ねられた。舌先が確かめる様に唇をなぞり、軽く音を立てて離れていく。

「キスしちゃったら、間接キスなんて気にならないでしょう?」

あっさりと宣ったハオに、葉はなんだか言い表すことの出来ない、複雑な気分になった。
ハオは、ちっとも解っていない。直接されたら、もっと欲しくなるに決まっている。
くすくすと笑うハオを見ていたらなんだか堪らなくなってきた。だから、葉は用済みになったペットボトルを机に放り出し、もう一度自分から口づけた。



あなたという熱源



「ぼくもね、本当はちょっとだけドキドキしちゃった」

そうして、長いキスを終えた後。
ハオが少しばかり照れ臭そうに笑いながら、秘密を打ち明ける様に耳元へと囁いてきて、葉は「やっぱり敵わないなぁ」としみじみ思ったのだった。
『ちょっとだけね』というほんの少し背伸びをした言い方を繰り返し口にするハオが、なんだか奇妙に愛おしかった。

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本当は5月23日のキスの日に上げようと思っていたネタでした。

2012.05.29

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