等価交換

お風呂から出てリビングに戻ってくると、憐がダイニングテーブルにたくさんの資料を広げて何か難しそうな顔をして紙に記していた。

……いつもみたいにソファーでパソコンじゃないの、珍しいな……これじゃあいつもみたいに憐を見れない。
その事に少し残念に思ったけど、だけどこれって八尋に教えてもらったヤツ、やり易いかな?

えっと、確か憐を呼んで顔の横でピースして指を曲げれば良いんだったよね……


「れ、憐」
「……ん?」


僕が呼ぶと、憐は作業してる手を止めてこっちを不思議そうに見てくれた。
だから、僕は顔の横でピースして指を曲げた。
くいくいっと……これで、合ってるんだよね?


「……あぁ、そういう事」
「? どういう事?」


僕がくいくいっとすると、憐は何故か納得したように僕の元に近付いてきた。
八尋の言った通り、憐は来てくれたけど……どういう事?
首を傾げていると、いつの間にか目の前に居た憐に抱き上げられた。


「ふぇ? なんで??」
「ん? 暴れたら落ちるから暴れるなよ?」
「あ、うん」
「いい子」


落ちるのは嫌だから憐にしがみ付くと、憐に背中をポンポンとされた。
そしていつものソファーに憐が座って、その膝の上に僕が対面する形で座らされた。


「んで? 誰の入れ知恵?」
「えっと、八尋……だけど……?」
「八尋か……あいつならやりそうだな」
「憐? 怒ってる?」
「そう見える?」
「ううん」


憐よりも少しだけ上に僕の顔があるから、憐が僕を見上げて聞いてくる。
こんな憐、僕しか見られないんだよね……嬉しいな。

そんなことを考えながら首を横に振ると、憐がふっと笑って僕のほっぺを撫でた。
その手に自分の手を重ねると、憐の顏がもっと優しくなった。


「なんて八尋に教えられた?」
「えっとね? どこの国か八尋も忘れたって言ってたから分からないけど、大好きな人に向けてやるんだって聞いたよ?」
「……まあ、あながち間違ってはねーな」
「うん? 違うの?」
「半分な」
「半分?」


半分って、どういう事だろう?
憐の言ってることが分からなくて、答えが欲しくてじーっと憐を見つめていると、ほっぺにあった憐の指が僕のほっぺをむにっと抓った。




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