企画 | ナノ


眠らない夜  




龍雅と俺の2人閉店間際のBARに残り、カウンター席に並んで酒を煽る。

特に何を話すわけでもなくただただ並んで呑むだけだ。


「……雨、降ってきましたね」


何も喋らない俺たちに静かに付き合っていたバーテンダーの龍希が窓の外を見ながらポツリと声を洩らす。
それを聞いて耳を澄ませば微かに聞こえてくる雨音。
静かな店内だから聞こえてくる小さな音


「マジか…」
「止むまで帰れねーな」
「そうだな」
「ふふ……それじゃあ僕も付き合いますよ? ここまで来たら最後まで」


ニッコリと俺たち向かって微笑む龍希
相変わらずこいつは……いいヤツだよ。ホント

いつ止むかも分からない雨と止むまで帰れない俺たちに付き添うなんて……無謀にも程がある
ヘタしたら夜が明けるまで帰れないのにな。


「だってよ、憐?」
「まあ、客である俺らが帰らねーと店仕舞いも出来ねーしな……悪い」
「謝らないでくださいよ……僕は好きで付き合っているんですから」


困った様な顔をする龍希に罪悪感が生まれてくる
……龍希が帰れと言えば俺らは帰るのにな……お人好しにも程がある
まあ、そこが龍希のいいところだと思うんだがな。


「……じゃあ、雨降って帰れねーし続きやるか?」
「それしか暇潰せねーだろ」
「まあな」


龍雅は俺の言葉にそう返し、カバンに仕舞い込んだファイルを取り出してカウンターに広げる。
そこに広がるたくさんの資料は今、敵対している組織の表に出る事なく機密にされているはずのモノだ。
何故ここにあるのかは……言えないが、な。


「それで? どうするんだ? 向こうはああ言ってるけど……」
「そんなの俺の知った事じゃねぇよ。 知るか」
「………はぁ、ったく」
「あんな奴らの言うこと聞くだけ無駄だ」
「まあ、一理あるが……」


お互い煙草を吹かしながら、酒を煽りながら今後どうしていくか……どう動かしていくかを討論していく。
一組織の2トップと謳われている俺たちの意見が食い違ってたら元も子もないからな?


「………あ、雨音…消えましたよ? 晴れてきたみたいです」


随分と長い時間討論を続け、時間を忘れていた俺たちに声を掛けて窓の外を指す龍希。
それにつられて窓の外を目を見やれば確かに晴れたようだった。
雨音も聞こえてこないし。

それを合図に討論を終え、身支度を整えると龍雅と一緒に店を出る。
そして、目に飛び込んできたのは朝陽の眩い光とそれに反射して輝く雨粒。


「夜が明けたみたいだね……朝陽が眩しい」
「あぁ……そうみたいだな」


朝陽が昇る東の空を目を細めて見ていると、隣から視線を感じそちらに目を向ける


「憐の髪、やっぱり陽の光を浴びると綺麗だよな」
「は? 何処がだよ」
「…………ったく、何度言えば信じるんだよお前は」
「何度言おうが同じだばーか」
「餓鬼かよ」
「お前に言われたくねーよ」


ふと合った目に思わず笑えば龍雅も同じように笑う
なんだか馬鹿馬鹿しく思えてくるんだよな……けど、それが楽しくて………まだまだ俺たちは子供だと実感させられる刻でもある。


「帰るか」
「だな」




prev / next

[ Back ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -