小さな変化

「本当は茉優ちゃんにウチで働いてもらいたいんだけどね」
「……え?」
「ウチの美人バーテンダーは祐ん所にはやらんぞ?」


祐さんに口説かれて戸惑っていると、隼人さんがそう言ってこちらにやって来た。
そして、ポンッとあたしの頭に手を乗せて隣に並んだ。


「…あれ、隼人さんお客さんは?」
「もうすぐ2時だぞ?一般客は帰ったよ」


隼人さんの呆れた声と顔に周りを見て見ると、店にいる客は目の前にいる2人だけだった。

2時に一回閉めてまた2時間ぐらい今度はホストやキャバ嬢の為に開くからこの2時間は精神的にやられたりする。
愚痴とかが殆どだからね…


「あ、ホントだ…」
「話に夢中になり過ぎだ。アホ」
「アホじゃないです。それを言うなら瀬波の方がアホですよ」


隼人さんの言葉にあたしは奥の方でカクテルグラスを磨く同じバーテンダーの瀬波に矛先を向けた。
瀬波は従兄弟で、高校の頃一緒につるんでいた友達でもある。
仲はいい方だよ。多分。


「…俺に話を振るなよバカ」
「寂しそうだなって思って」
「アホか」
「うるさいなぁ」
「2人共俺から見たらアホでバカだよ」
「「酷いです」」


そんなあたし達のやり取りに笑う祐さんと大和さん。
祐さんと隼人さんは幼馴染らしくて、高校卒業と同時にこの世界に進んで来たらしい。
…あたしや瀬波と同じだ。


「ここは緩くていいなぁ。一緒にいて落ち着くよ」
「C-Roofは緩くてなんぼのBARですしね」
「大和さんも祐さんも言いたい放題ですね」
「ま、それがウチの売りなんでね」
「オーナーがこんなだしな」
「…瀬波、減給な」
「マジっすか」


隼人さんの言葉に瀬波は驚愕し、あたし達は笑った。
こんな職場だからこそ、続けられてると思うんだよね。あたし。


「それより、ここに三人もバーテンダー要らないだろ?」
「ウチは人気の店なんでね…
それに、瀬波も茉優も客に人気が高いからウチとしても手放せないんだよね」
「そこをなんとか」
「嫌だね」


祐さんと隼人さんのやり取りは一向に終わる兆しが見えない。
このやり取りはかなり前から続けられてるからね。




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