「今日、命日だ……」
朝起きて、時計の後に見たカレンダーでそう気付いた。
毎日毎日、学校行ってダンスのレッスンしたりボイストレーニングしたり大変ですっかり忘れていた。
忘れないようにしてたのにな……ごめんね、勇貴。
僕は起き上がると着替えると部屋を出ると、朝ご飯を食べると鞄を持って家を出た。
朝そんなに早くもないから人も車も行き交ってる。
僕は花屋に寄って花束を買うと、勇貴の眠る墓場に向かう。
家にはまだ行ける勇気がないんだ。
僕が原因で事故に遭って、目の前で勇貴が血塗れで倒れてて呼び掛けても応えてくれなくて怖くて。
病院に運ばれても勇貴は助からなくて、もう僕に笑いかけてくれることも目が開くこともなくて。
おばさんもおじさんも僕は悪くないって言ってくれるけど、僕が悪いんだ。
僕が……僕が……勇貴を殺したようなものだから。
あの時の事を思い出して泣きそうになってると、墓場に着いた。
勇貴の墓を綺麗にすると花束を添えて手を合わせる。
「勇貴……俺ね、今アイドルやってんだぁ。似合わないって勇貴は笑うかもしれないけど、みんな優しくてね、大好きなんだ」
勇貴が生きてたら、勇貴はきっと笑う。
「要人には似合わない」って腹抱えて笑う。勇貴はそんな奴だったから。
勇貴と、もっと一緒に過ごしたかったな……勇貴とずっと一緒に居れるものだと思ってたのに。
「勇貴、見守っててよ……もう、誰も失いたくないから俺、頑張るよ」
勇貴の分も生きるから……だから、見守っててよね。
ぜったいに、勇貴の分も幸せになるから。勇貴の何倍も生きるから、だから……!
言いたいことも伝えたいこともまだまだたくさんあったけど、これ以上長居するとおばさん達と出くわしちゃうからその場を離れて少し早足に歩いてく。
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