RoseN


あの夏



事故の遭った道路に出ると、あの日の事が昨日の事のように思い出せる。


2年前の中学最後の夏、勇貴と遊んでいてその帰り道にこの道を歩きながらふざけながら戯れあってたんだ。
そしたら勇貴が体勢を崩して車道に乗り出して、偶然か必然か……赤信号だったのにも関わらず車がそのまま激突してきたんだ。

慌てて伸ばした僕の手も声も勇貴に届くことなく勇貴は車に撥ねられた。
一瞬、何が起きたのか分からなくて呆然と立ち尽くしていたけど、勇貴を轢いた運転手が勇貴に声をかけてる声で意識が戻って勇貴に駆け寄ると、勇貴は血塗れで倒れてて、僕の呼び掛けにも応えてくれなくて、息をしているのかもあやふやで、途端に怖くなった。


救急車が来て勇貴が運ばれて、一緒にきた警察の人に事情聴取された。
だけど僕は勇貴の事が気になって、生きてて欲しくて何を言ったかあやふやで。だけど、ちゃんと見たままの事を言っていた事を後から知った。

おばさんが教えてくれた。


警察の人について病院へ行くと、おばさんとおじさんがいて、僕を見つけるとおばさんが駆け寄ってきて抱きしめてくれた。
何がなんだか分からなくて後から来たおじさんを見つめると、僕の頭を泣きながら撫でてきた。
おばさんも、僕を抱きしめながら泣いていて……なんとなく状況が掴めた。

……勇貴、助からなかったんだ。


「要人くんが無事でよかったわ」
「怪我はないかい? 要人くん」


僕を心配させないように言ってくれてるおばさん達。嬉しいけど、ありがたいけど……だけど、こうなったのは僕の責任だ。
僕が……勇貴を殺したも同然だ。
それを伝えないと……って思っておじさんを見つめると首を横に振った。


「要人くんは悪くないよ。勇貴が死んだのは要人くんの所為じゃない」
「でも!」
「要人くんはただ、一緒に居ただけに過ぎないよ」


おじさんもおばさんも警察も、誰も僕を責めないなら僕が自分を責めて生きていけばいい。
勇貴の分まで僕が生きるから、だから勇貴は僕が怠けないように見てて……ーー


「もう、誰も失わない」


絶対に。
そう誓って僕は、今日も生きていく。
勇貴を忘れたりしない。




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