「ありがとう…ございます…」




終わってしまった。
私は、座っていた椅子から立ち、颯斗先輩の下へ移動する。
颯斗先輩は優しい笑みを浮かべたまま、立ち上がった。




「ごめんなさい…ごめんなさい…」

「どうしたんですか?」

「っ…これで最後にしますから…」

「え…わっ…」




言うや否や私は立ち上がった颯斗先輩に勢いよく抱きつき、そのまま押し倒した。
床の上に広がる淡い桃色の髪の毛。
何が起こったのかわからないという顔をしている颯斗先輩の表情に胸の痛みが治まらない。
大丈夫、これが最初で最後。
だから…―――




「颯斗先輩の初めてを私にください」

「愛璃っ…んん…っ…」




戸惑う唇にキスをする。
柔らかいそれを愛おしむように角度を変えて何度もキスをする。
漏れる吐息さえも飲み込むかのように颯斗先輩の唇を舌で開ければ颯斗先輩の舌が絡んできた。




「ふぁ…っんん…はぁっ…」

「んっ…ふっ…愛璃っ…」




ぐいと肩を押され、唇が離れる。互いの舌には銀色の糸が繋がっていて私はゴクリと生唾を飲み込んだ。




「やめてくださいっ…どうしてっ…」

「…とせ…が…き…から…」

「え?」

「颯斗先輩が好きだから…!!!」

「っ……」




瞳に溜まる涙を流すまいと颯斗先輩から視線を逸らす。
ここで泣いちゃ駄目。
今からする事は私に泣く権利のない事だから。




「何も言わないでください。抵抗も…しないでください。これが最初で最後です。全部…全部捨てますから」




私の颯斗先輩への思いも全て、何もかもを捨てる覚悟は出来ている。
だから、お願いだから、何もしないで。
私の言葉に颯斗先輩の身体が抵抗をやめたと同時に私は颯斗先輩のズボンへと手を伸ばす。

さっきのキスで感じてくれたのかズボンの上からでもわかるほど主張されたそれを優しく愛撫する。
颯斗先輩はたまに吐息を漏らすけれど、抵抗はしてこない。




「先輩…大きい…」

「んっ…ああっ…」




上から下へとゆっくりと手を動かす。
颯斗先輩のソレは先ほどよりももっと大きく硬くなった気がした。




「っんん…はあっ……っ…」

「気持ち…良いですか?」




もっと気持ちよくしてあげます。

今度は愛撫していた手でズボンのベルトを外し、ズボンのチャックを下ろす。
私は颯斗先輩の上半身に乗る形だった身体を颯斗先輩の足の間へと移動させる。
そして颯斗先輩の下着を下にずらし、颯斗先輩の固くなったそれを両手で挟み込んだ。




「暖かい…」

「無子っ…何をっ…んっ…」

「もっと気持ちよくなってください…ん…」

「ああっ…やめて…くだ…さいっ…汚っ…」




颯斗先輩の大きく反り起つモノを私はくわえて、舌で愛撫する。
ちゅっちゅとわざと音を立てて舐めれば、颯斗先輩の喘ぎ声が大きくなった。
先端を舌先で舐めたり、筋裏を下から上へゆっくり舌先でなぞったりすると、先端から我慢汁が少し出てきて、私はそれも綺麗に舐め取る。




「無子っ…無子っ…もうっ…!!!」

「一回、イってください」




私は少しずつ指と舌の動きを早くして、颯斗先輩を絶頂へと導く。
颯斗先輩私の頭に両手を置き、感じているのか段々に力が篭っていく。
そして…―――




「っ…やめっ…ああっ…!!!」

「んっ…」




絶頂を迎えた颯斗先輩は大きく声を上げ、力の入っていた手は力なくぐったりと床へと下ろされた。
私は口の中に出された颯斗先輩の白濁色の液体をそのまま飲み込み、汚れた口元を手で拭う。
肩で息をする颯斗先輩は普段の清楚なイメージとは掛け離れていて、とてもいやらしい。
先輩、今度は私と気持ち良くなってください。

元気をなくした颯斗先輩のモノを再び愛撫する。
絶頂を迎えたばっかりのソレは敏感で、少し触れただけなのに、颯斗先輩の身体は大きく震えた。




「今度は私の中で果ててください」

「くっ…うっ…」

「ふふ…颯斗先輩元気ですね…もう起ってきましたよ」

「い、言わないでっ…くださっ…いっ…んっ」




私は愛撫の手を止め、スカートの中へと手をかける。
下着を脱ぎ、寝そべる颯斗先輩に跨がり、先輩のモノを挿入(い)れながらゆっくりと座る。
乱れる颯斗先輩で私も感じていたのか、私の中も相当濡れていて、すんなりと颯斗先輩のモノを受け入れた。
中で出されても大丈夫なのようにちゃんと避妊の薬を飲んでいた私はなんて汚い人間なんだろう。




「う、動きますよっ…」

「んんっ…あっはぁっ…」

「んっ…んふぅっ…ああっ…」




颯斗先輩の胸板に手を置き、颯斗先輩のモノを出し入れする。
私の中で擦れる異物感に私の身体がおかしいくらいに熱くなった。
グチュグチュと卑猥な水音と二人の喘ぎ声だけが響く音楽室。




「はっ…あっ…き、気持ちっ良いっ…」

「無子っ…!!」

「は、颯斗せんっひゃあっ!!!」




今まで何もしなかった颯斗先輩に突然腕を引かれてそのまま抱きしめられる。
そして下から上へ突き上げるように腰を振り、私の中の奥まで颯斗先輩のソレが入ったような感覚。




「颯斗っせんぱっ…!!」

「はっ…はぁっ…愛璃も気持ちよくなってっくださいっ…」

「ああんっ…んんっ…はあんっ…あっ…」




下から襲いくる快感に私は成す術なく、颯斗先輩の身体に手を回す。
颯斗先輩の手がもぞもぞと動いたと思えば、突然制服の中に手を入れられ、ブラのホックを外された。




「な、何っ…」

「やられっぱなしはっ…性に合わないのでっ…」

「やっ…あんっ…んっ…」




ブラを上にずらすと同時に颯斗先輩の手が私の両胸の突起を弄る。
下からの快楽に加え胸の敏感な部分を弄られる快楽。
両方から攻められ、イきそうになるのを何とか耐えているが、もう限界に近い。




「あんっ…んっ…も、もう駄目っ…」

「一緒にっ…イきまっ…しょうっ…」

「は、颯斗先輩っ…っ……ああああっ…!!!」

「くっ……」




私がイった直後、私の中の締め付けで颯斗先輩もイった。
















二人で繋がったまま音楽室の床に寝そべる。
私は颯斗先輩の上に乗ったままだ。




「どうして…どうして怒らないんですか…」




颯斗先輩に抱きしめられたままの状態で私が言う。
最低な事をしたのに、颯斗先輩の腕の力は弱まる気配がなくて私はどうしたら良いのかわからなくなる。




「無子は最初で最後って言いましたね。全部捨てる、とも」

「………はい」

「それは僕を好きだと言ってくれた気持ちや全てをなかった事にする、という意味ですか?」

「……そうです」




颯斗先輩が溜息を吐いた音にビクッと震える私の身体。
怯える資格なんてないのに。




「ずいぶん勝手ですね」

「………」




謝りたいのに声が出てこない。
こんな時だからこそ、声で伝えたいのに…出てこない。




「あなたは僕の何を見てそんな結論に至ったんですか」

「え…っと…」




声色がすごく怒っている。
当然だ、それほどの事をした。
私がやっとの思いで出した声は少し震えていて、泣きそう、なんて他人事のように思った。




「颯斗先輩に断られるって思って…。でも好きで好きで…大好きで」




だから、最後の一度だけ、繋がりたかった。
そして、それで自分の気持ちを全て捨てるつもりだった。

瞳に溢れる涙を耐え、颯斗先輩を見る。
颯斗先輩は私の方を見ず、ずっと天井を見ていて表情がよく伺えないが、きっと怒っているんだろう。




「最低な事をしたって…思ってます…。す…すいません…」




震える声に身体まで震えだす。
颯斗先輩に抱きしめられたままだからきっと颯斗先輩にも気付かれてる。
その時颯斗先輩の腕の力が強くなった。




「僕の返事を勝手に決めないで下さい」

「っ…」

「僕はあなたからの告白が嬉しかったんです」

「え…」

「ここまでしておいて、僕をここまで好きにさせておいて、今更なかった事になんて…そんな事させません」




聞き間違いだろうか。
ううん、きっと聞き間違いじゃない。
颯斗先輩は漸く天井から目を外し、こちらを見た。
その目はとても優しい色をしていた。












(感情をうまく表現出来ない僕の唯一の自己防衛は完璧な笑顔)
(そのせいで好きな人を困らせ、泣かせた僕はとても罪深い)
(あなたの行為は最低だと言うのなら、僕だって最低だと、僕が笑えば彼女も笑う)
(細められた瞳から零れた一筋の涙は穢れのない綺麗な雫だった)





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