――――半年後。

「…ひ、っく…えっぐ…」
「もー、直獅先生泣きすぎですよ?」
「そういう、お前もっ…さっきまで泣いていた、じゃないか。」
「それはぁ…だって、仕方ないじゃないですか。卒業式、だったんですから」

コイツが嵐のように転入してから半年が経ち、今日は卒業式。旅立つ生徒を見送るのは何度経験しても慣れるものではない。

「直獅さん、半年前の約束ちゃんと覚えてくれていますか?」
「へ…?」

質問が唐突過ぎて素っ頓狂な声が出た。涙を拭って彼女を見ると少しむくれた顔をして「もしかして、忘れちゃったんですか!?」と。むくれた顔に少し笑いがこみあげてきたが、噛み殺す。

「そのような事ございませんよ。我が姫君?」

おどけて彼女の前に跪き、手の甲に唇を落とす。
瞬く間に顔を真っ赤に染め上げる彼女が愛おしくて、つい吹き出してしまう。
「あ、ひどい!だいたい…」と、ぶつぶつ言っている姿でさえも可愛く見えることを彼女はわかっていない。
――それとも俺が末期なのか…。
だけど、それでもいいかと思ってしまうのだから、もう本当によっぽどなのだろう。

「ちょっと!聞いてる!?」
「あぁ、俺が悪かったよ。」
「もうー…」

むくれる彼女にわざとリップ音が鳴るようにキスをする。触れるだけの短いキス。
これが俺たちの仲直りをしよう、という合図。これに相手がキスを返してきたら仲直りをする。触れるだけのキスをしたら、それに等しく触れるだけのキスを返してくる。いつもは―…

「っ…ん……?」

彼女が上目遣いで見上げてきて、俺に目を瞑るよう催促する。これもいつものこと。俺が目を瞑ったのを確認してから恐る恐る口付けてくる。
その仕草はあまりにも可愛くて、愛おしくて。そして、こんな風にキスをするのは久しぶりで…そう思って、甘くみていた。

「ちょ…っ……っん」

短いと思っていたキスは思いのほか長くて、久しぶりで、いきなりで、色々重なって息の仕方がわからなくなる。唇を離し酸素を求めて強く息を吸い込んだ瞬間に彼女の舌が滑り込んでくる。
一生懸命絡めてくる彼女のたどたどしさに少し、熱を帯びる。

「ん、…は…っ」

しばらくして彼女の方から唇を離してくる。二人の間を銀の糸が結び、彼女の頬は紅く、瞳が潤んでいる。
堪らなくて糸が切れる前にもう一度、今度はこちらから唇を塞ぐ。さっきよりももっと、深く、長く――
彼女も俺が絡めるのに応えて絡めてくる。そうしている時間は、俺にはほんの短い間のように思えたが、彼女にはそうではなかったらしい。

「な、おしさ…っん、くるしっ…」
「なんだよ、先に始めたのはお前だろ?だから…」

力が抜けてきたところをみて、そっと肩を押して床に押し倒す。


「もう、止められないからな」


仲直りのキスで煽られて、さっきのキスは激しくなったが、三度(みたび)目は触れるだけの、子どもみたいな優しいキス。何度も角度を変えて紡いでいく。
長い間そうしてから唇を離す。
先ほどよりも紅い頬、潤んだ瞳。それを至近距離で見つめると、その視線に戸惑ってか彼女が身をよじらせる。やはり彼女の仕草は一つ一つが可愛くて、愛おしくて…自然と笑みがこぼれる。

「ははっ、どうしたんだよ」
「そんな見ないで、はずかしい……それに、」
「ん?」
「床の上で、するのは、ちょっと…」
「あ…」

煽られた勢いでヤろうとしていたが、冷静に考えてみれば床の上ですれば彼女に負担がかかってしまう。
――こんなことも考えられないくらい余裕なかったのか、俺は…

「すまん、想像以上に余裕なくなってたみたいだ」
「あはは、今まで直獅さんに余裕があったことにびっくり!」
「こンの……そんなに床の上でしてほしいのか?」
「ごめんなさい、冗談です。」

「わかればよろしい」そう言いながら彼女の体を抱き上げてそのままベッドに向かう。
彼女をそっと横たえてから、そのまま口付ける。徐々に深く、深く――…

「ふっ…ん//」

シャツの裾から手を忍ばせて胸の膨らみに触れる。最初は優しく触れていたが、キスが激しくなるにつれて触れる手の動きにも早さが増す。
そっと目を開けて目の前の彼女を見てみると俺の愛撫に感じてくれているのか、エロい顔をしていて、俺をさらに煽る。
さっきから煽られてばかりで――…熱を帯びてばかりでそろそろ限界だった。

胸に触れている手はそのままに、空いているもう片方の手をスカートの中に滑り込ませて下着の上から彼女の華に触れる。そこはもう既に外から触ってもわかるぐらいに濡れていて、本当に感じてくれていたのか、と嬉しくなる。
下着をズラして華に直接触れれば「ひゃっ…//」と身をよじらせる。それでもお構いなしに華に指を埋めれば「ん…っ!」と少しくぐもった声を出したので、キスに集中させようとクチュ、とわざと音を響かせながら舌を絡めれば、それに応えようと彼女も必死に絡めてくる。その間に埋める指を2本、3本と増やす。

だいぶ解れたところで指を一気に引き抜く。自身のもそろそろ限界に近いため、始めからなかった余裕がもっとなくなってきている。

「ごめ…やっぱ、余裕ねぇわ……もう、いいか?」

言いつつ下着を下げれば、喋る余裕がないのかコクンと何回も頷く。
了承を得てから彼女の華に自身のソレをあてがう。ズブリ…といやらしい音をたてながら、ゆっくりと進めていく。

「つぅ…」

彼女の声に思わず動きを止めると、「だ、いじょうぶだから…進めて?ね…?」と苦痛に顔を歪めつつも笑顔を向けてくる。
「わかった…」と呟いて、少しでも苦痛が和らぐようにと唇を重ね、愛撫を続ける。
そして一瞬力の緩んだのを見逃さずに、一気に奥まで進める。

「繋がった、ぞ…?大丈夫か?」
「へ、いきです…直獅さんと、ひとつになれて…嬉しいですから」


息を切らせて微笑む姿を見て愛おしさがこみ上げる。一回ギュッと抱きしめてから、彼女の華の中で動き出す。


「んっ…あぁっ…」


グジュグジュといやらしい音を響かせながら徐々に動きを速めていく。彼女の締め付けが強まり、絶頂を迎えそうになる。


「…なぉし、さっ…も、ムリ…っ」
「俺も、だ…はぁっ…一緒に、イこ…っ」
「ひゃっ、ああぁ…っ」

最後に強く突くと絶頂を迎えた彼女の締め付けが一際強まり、直獅も同時に果てる。


「はっ…はっはぁっ……」

しばらく肩で息をして落ち着くのを待ってから、彼女を見てみれば、果てて意識を手放していた。

「ん…」

完全に息が整ってから、果てて眠ってしまった寝顔を覗き込んで、思わず口元が緩む。愛らしい、まだあどけなさが少し残る寝顔を見つめ、一人、誓う。

―…大事にする。一生、ずっと…大事に……


「はい…なお、しさん…」

ハッと彼女の顔を見ると、すやすやと寝息をたてている。よくよく考えてみれば、自分は声を出していない。しかしまぁ、何というタイミングで返事をしたものだ。嬉しくなって彼女を抱き寄せる。
相も変わらず静かに寝息をたてる彼女の額に唇を落として、そのまま眠りに落ちた。






――…自分以外の体温の心地よさに目が覚めると、目の前の愛おしい人の寝顔を見て目を瞬かせる。
それと同時に笑みがこぼれる。自分より10も年上には見えない可愛らしい寝顔。起きて一番にそんな顔を見られるなんて、なんて幸せな役得だろう。
今日は自分も彼も休みなので、彼の腕に抱かれて,心地よい体温を感じながら二度寝を決めこもうとして、ふ とあることを思いつく。
彼を起こさないように、スルリと腕の中から抜け出して自分のバッグの中をあさる。目当てのもの…携帯を探し当ててからベッドへ戻る。

カメラを起動して、ピントを合わせて決定ボタンを押す。
パシャッ―…と一閃の光が瞬く。
思いのほかフラッシュの光が強かったため、起こさなかったかと彼の顔をそっと窺ってみれば、「んー…」と身じろいだだけで目覚める気配はない。
内心ホッとしつつ携帯の画面を見てみれば、画面いっぱいの年齢には似合わない可愛らしい寝顔の彼が写っていた。

「ふふっ…可愛い」

そう呟いて、しっかりと保存してから携帯をしまう。それから再び彼の腕の中に滑り込み、
そっと目をつむる。

―…どうか、夢の中でも彼に…直獅さんに会えますように。そして、ずっと、ずーっと直獅さんの傍にいられますように…

未来に想いを馳せて、導かれるように深い眠りについた。





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