俺はゆっくりと頷いて、彼女の頬を伝う涙を舐めて拭う。

更に中へグッと押し進んでいくと、彼女は「はうっ…ああ…あっ!」と大きな悲鳴をあげて、身体を仰け反らせた。

なんてこんなにも、無子は健気なのだろうかと、強く抱きしめ、抱き返される程に、愛しい気持ちが身体を駆け巡って行く。


シーツは薄くなった血液で、薄くピンク色に滲んでいた…彼女は息が上がり、肩で息をしている。

痛みを堪えているせいか、掴んだシーツには皺が出来て、大粒の涙は彼女の柔らかな髪を濡らしていた。

彼女の身体は細く、壊れてしまいそうで、だけど気丈で、俺のすべてを受け止めてくれて…無子の胸の中に顔を埋める。

そこは温かで、彼女はまるで天使のようであり、聖母だ。


「…あっ…あっあっ…ンッ、あっ…あうっ…」

俺は彼女の腰を浮かせて、更に奥へ当たるように体位を変える。動きに緩急をつけて、彼女の反応を確かめながら、気持ちの良い場所を少しずつ探ることに集中した。

「…ンッふぅ、あんっ!あっあっあっ…!」

彼女は額に汗を滲ませ、俺の顎から滴る汗が、彼女の首筋に溜まっていく。

お互いの汗でぐちゃぐちゃになり、目に入る汗で視界がぼやけて、俺は突き続けながら暑さに前髪をかきあげる。


「アあアッ!…ンッンッンッ、」
「もうッ…いきそ…っ…、」

さっきまでの甘い声からは想像できなかったような、激しい喘ぎ声を彼女は部屋中に響かせ、途中に混じる「…おかしくっなっちゃ!…ンッ!」という反応に、俺は確かな手応えを感じた。

のと共に、ギュウっと捕まれるような、中の収縮を感じて、その強い締め付けに俺の集中が切れてしまう。

更に腰の動きを速めると、自分の限界が近いことを悟った。

「あーッ…あっ!」
「…ッ…!」

気が飛んでしまいそうで、一瞬、身体に強張るような緊張感が走る…

無子が敏感に反応するポイントを刺激すると、彼女はビクビクッと足先を振るわせて、顎を天高く突き上げ、身体は弓なりに仰け反る。

俺にも絶頂が押し寄せてきて、それを堪えることも出来ずに、勢い良く彼女の中に放った。


一度に大量に出されたはずなのに、彼女のが強く絡み付いて離してはくれず、最後の一滴まで絞り取られる感覚。

俺の弱って敏感になった所を、追い討ちをかけられるように刺激されると、全身が脱力してしまい、もう手にも力が入らない…俺は無子の身体の上に、雪崩れ込むように覆いかぶさる。

中からゆっくりと引き抜くと、それは薄っすらと血にまみれていて…彼女はガクガクと足を振るわせて、しゃっくりにも似た嗚咽を漏らして泣いていた。

俺はその横に寝そべって、優しく優しく、彼女の全身を撫でる。

「俺のために、…ありがとう。」

そう言って髪を梳くと、彼女はコクンッと小さく頷いて、恥ずかしいのか押し黙ったまま、俺の胸に顔を埋めてしまった。

この温もりに、いつまでも寄り添って居たいと思う。そして、また繋がりたいと願ってしまう、我侭な俺も存在していた。

「錫也、初めてだった…?」

小さな声でそう問いかけられて、俺は「そうだよ。」と、耳元で囁く。

彼女はチラリと俺に顔を見せて、ニッコリと嬉しそうに微笑んだ。「私、錫也の初めて、もらっちゃった。」と。

その表情が可愛過ぎて、俺はギュウウウウっと強く、彼女の身体を抱きしめる。「錫也、痛いよ!」って、コイツが笑ってひっかいてくるまで。



外はもう夕方らしく、日が落ちて夜の帳が下り始めていた。

部屋には闇が訪れ、聞こえるのはお互いの息遣いだけ。静寂に包まれながら、俺たちはそのままの姿で、毛布一枚を被ってひとつになっていた。

「…怖かっただろ?」

俺が無子の耳に触れると、彼女はピクリッと反応する。

俺はそのまま彼女の髪を梳いて、後ろ頭に手を伸ばすと、そのまま胸の中に引き寄せた…ドクンッドクンッと、脈打つ心臓の音を聞かせる。

なんだろう、繋がった後なのに、繋がる前よりも気持ちがざわめいて落ち着かない。

「俺、お前のこと好きだから、好き過ぎるから…こういうこと、お前のこと、もっと触れたいって、感じたいって思う…無子は、嫌か?」

彼女の細い指が俺の胸板をなぞり、彼女は首を振って「嫌じゃないよ。」って、真っ直ぐに応えた。

だけど、少し震えた声で、「…でも、ちょっと、怖かった。」と、正直に答える無子が愛しくて、俺は顎を引き寄せると、優しく触れるだけのキスを落とした。

「俺も、覚えていくから。お前の身体のこと、もっと教えて?」

また彼女は赤らめた顔を隠そうと、俺の胸に顔を埋めてしまう。

それを俺は頬を両手で包み、ムニッと挟んで押しつぶして、面を上げさせる。

「これから、もっとしてこうな?」

首を反らして抵抗するのを、無理やり捕まえて前を向かせると、彼女は視線を泳がせて、目をぐるぐると動かす。

それから少しして、「…うんっ!」と頷き、顔を真っ赤にして、ちょっと泣きそうな顔になるのも可愛い。



疲れてしまった無子は、そのまま寝息を立て始め、俺自身も心地よいだるさと眠気に襲われ始めていたから、目がうつらうつらとしてきていた。

可愛い寝顔を見つめながら、指先で小さな鼻をくすぐる…モゾッと少しだけ動いたけれど、彼女は起きる気配をさせない。そういう俺も、目を開けているのもやっとだ。

後で、家まで送ってかないとな…、そうだ、ケーキにラップもかけてなかったか…、などと思い出しながら、俺はそのまま睡魔に身を任せる。


幸せ過ぎて、俺…どうにかなりそうだ。

彼女の小さな手に俺の手をそっと重ねて、微かに動く彼女の挙動を、意識の端っこで感じ…俺は指を絡ませるように、繋ぎ直した。








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