「…す、すず、やっ…、すずやっ…こ、こわい、…。」

その言葉に俺は面を上げる…彼女のその不安そうな表情と声色を感じて、急に胸が締め付けられるような、苦しい感覚がした…彼女の髪に手を伸ばして、俺は優しく、子供をあやすように撫でてやる。

それを繰り返していると、無子は少し落ち着いたようで、深い呼吸を繰り返した。


「俺のことが、怖い?」

彼女はどっちともつかない、わからないといった顔をした。

でも恐らく、怖いという気持ちの方が勝っているんだろうことが、容易に予想できた…無理も無い、無子だって初めてなんだ。

それは男の俺よりも、何倍も怖いに決まっている…その恐怖は、男の俺には量りし得ない。

だけど俺ならば、無子のことを不安にさせるようなことはしない、絶対に…その自信が俺にはあるから。


俺は彼女から身体を離すと、起き上がって、壁際に三角座りをした。

「もう少し我慢した方が良いのかな。」

それはいつまで我慢すれば良いのかわからない…する時が、一生来ないかもしれない…そんな風にも感じられた。
俯いていると、無子は続いて俺の隣に腰掛けてくれる。離れていくと思っていただけに、俺は少し安心してホッと肩を撫で下ろす。

真っ直ぐにお互いの視線が重なった時に、俺は「お前が良いって言ってくれるまで…。」と言葉を続けた。

「俺、お前のこと好き過ぎて…いつもこんな、こと想像してて…」

恥ずかしさもあったけれど、今は正直に言葉にしなければいけないと思った。

無子も真っ直ぐに俺の言葉を聴いて、「…うん。」と小さく頷く。


「その…お前のこと、抱きたくて… …っ。」

実際口にしてみると、今度は俺がカァと顔を赤らめる番だった。

無子も負けじと顔を赤くしたけれど、ヤバイ、恥ずかしい…。


なんだか俺ばっかりが、性に対して意識しているみたいで悔しいよ、情けないよ。

無子はいつものように接してくるから、俺はどんな顔をすれば良いのかわからなくなって、溢れ出す感情を止めることが出来ないんだ。

「今、いま俺、すっごく、緊張してる…」

俺は彼女の手をとって、「俺の心臓の鼓動、感じて。」と自分の心臓へと掌を押し当てる。

自分でもバクンッ、バクンッと、心臓が破裂しそうに、身体全体を揺さぶっているのを感じられる。

「わ、私も…緊張してる…。」

そう言って、彼女に手を掴まれる…今度は反対に、俺が彼女の心臓の鼓動を感じさせられる番だった。

トクン、トクン、トクンと、それはペースがとても速くて。彼女の温もりを感じられて、そしてそれは柔らかで、緊張に震えている。


無子との距離が縮まる…俺はゴクリッと喉を鳴らして、ゆっくりと目を瞑った。

すると、彼女の柔らかなものが、上から俺の唇に落とされる。それに応えるように口を開くと、彼女の方から積極的に中へと舌先を差し入れてきた。


互いに柔らかな舌先を感じ合い、絡ませあい、繋がりあい、俺は彼女の背中に両腕を回して強く抱き寄せ、自分の足の間に座らせた。

セーターから覗く白い肩を撫で、下着の肩紐に軽く触れる…それを掌で転がすように、ゆっくりと肩から下ろしていく。

俺が服の裾から手を差し入れ、背中を撫で回すと、一瞬彼女の身体がピクリと反応したが、もう恐れはないらしく抵抗はしてこなかった。
重ね合わせた唇は激しさを増して、息をもつく暇を与えられない。

俺は唇を咄嗟に離して、乱れた呼吸を直そうと深呼吸を試みるも、またすぐに塞がれてしまう。

服の中で身体を弄り、セーターを胸の上までめくりあげる…純白を基調とした、淡いピンクの小さなお花があしらわれたソレは、無子の豊かなバストを覆うように包んでいた。


顔を少し隠すようにして、手の甲で口を覆って「恥ずかし…い!」と、恥じらう表情に、俺はニヤッと口の端をあげる。

「錫也っ…おねがいっ、明るいから…カーテンしめて?」

無子は咄嗟に両手で胸を隠して、甘えたように上目遣いでお願いしてくる。

俺はちょっと残念に思いつつ、「そうだよな。」と、ベットから立ち上がって、遮光カーテンをシャッと窓にかける。

カーテンからは薄っすらと光が透けるのみになり、部屋はほんのりと明るいぐらいで、丁度良い雰囲気ができあがった。








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