「変、かもね。」

頭の中でプツッと、何かが切れた音がした。

そう言った俺は、いつものように微笑んだりする余裕もなくて、表情を変えることができなかった。

そっと彼女の頬に触れて髪を梳く…親指でゆっくりと顎を撫ぜると、彼女の身体がピクリッと反応した。


俺が顎に触れると、それは口付ける合図。

それを心得ている無子は、少し瞳を揺らして…そして、ゆっくりと瞼を閉じた。


なんて愛しいんだろう。

今すぐ、俺の胸の中に収めてしまいたい…俺は彼女の華奢な肩を引き寄せて、顎を上に持ち上げると、ピンクの小さな唇に吸い寄せられるようにして、優しく触れるような口付けを落とす。

座っていた彼女が徐に立ち上がると、俺は両腕を腰にまわして身体を抱きとめ、より深く唇を重ね合わせた。

薄っすらと瞼を開けると、瞼を閉じた彼女の長い睫毛がフルフルと震えていた。

呼吸をしようと唇を開いた瞬間に、彼女の中へ割って入り、舌先で前歯をなぞる…

無子のさ迷う柔らかな舌先を誘い、絡ませるように舌の裏を弄り、俺の口付けにウットリと気持ち良さそうにした表情を、彼女に見せられて俺は更に欲情に駆られた。

応えるように、彼女は自身の小さな手を、俺の胸板に添える…俺は腰にまわしていた掌を、ゆるゆると下ろしていき、布越しに臀部から太腿へと確かめていった。

パニエのふわふわとした薄い布の重なりと、レース越しから、張りのある身体を弄ぶ。

「せぇ、せんぱぁい…っ」

眉を顰めて、苦しさを訴える姿にそそられる。唇を離すと、彼女はだらしなく舌を突き出して、そこからは一本の銀の筋が現れては消えた。

もっと…もっと…と、強請るような好色な表情は、抑制されていた感情にとって、あまりにも刺激が強すぎた。


無子の腕を自分の肩にまわして両足を持ち上げると、俺は軽々とお姫様抱っこをする。

いきなり身体が浮いて驚いた彼女は「わ、わぁっ!」と声を漏らし、強く首に掴まってくる。

林檎のように真っ赤に染まってしまった顔を、必死に俺の胸に押し付けるようにして隠しているのも束の間。俺は無子の身体をゆっくりと下ろすと、2人の重さにベットが軋んだ。

そのまま俺は馬乗りになって、彼女の両手首を掴み、顔の両脇へ力尽くにそれを押さえつけると、恥ずかしさに身を捩ったり顔を背ける姿を、暫しの間視線で犯した。


暫くすると、観念したようにぐったりとして、抵抗するわけでもなく、俺の力の前になされるがままになる。

反らされた赤い顔とは対極に、髪の間から空ける首筋は真っ白で、俺はその首筋に優しく唇を落とした。

ちゅぅっ…という、軽いリップ音をさせて、その後に舌先でくすぐるように筋を描く。

身体が微かにピクリと反応したのを確認して、俺は鼻の頭でゆるゆると首筋をなぞりながら、上へと上る。

髪から香る甘い石鹸の匂いに、スンスンと香りを確かめていきながら、唇で耳朶を軽く触れるのを繰り返すと、くすぐったそうに首を動かして逃げようとするので、俺は思い切って耳朶を口に含んだ。

わざと耳元でグチャグチャと音をさせると、彼女の口から「ふぁっ…やめぇっ…てぇ…」と、可愛らしい抵抗の言葉が聞こえる。

駄目、止めてやれない…その反応は、益々俺を誘うだけだった。

彼女の身体はモジモジとして、足を閉じようとして力が入るのがわかる。

弱いであろう耳元を、俺は執拗に攻めながら、掴んでいた腕を開放してやると、そのまま空いた両手を、無子の胸の膨らみへと移動させる。

両手でその膨らみを包み込むと、布越しとはいえ掌から余る程の大きさがあり、真ん中に寄せると、くっきりとした谷間が現れた。

あまり強く揉みしだかないように注意しながら、下からゆっくりと寄せるように包んだ胸の中へと、俺は顔を埋めた。

そこはさっきよりも甘い匂いが強く、クラッと眩暈がしてしまいそうだ…。


「ぅ…す、ずやっせんぱぁい…」

彼女の声は微かに震えていて、俺は手を止めた。

恥ずかしさに耐え切れず、瞳はうるうると揺れていて、呼吸も少し浅く…半開きになった艶めいた唇を、何か言いたげにカクカクと動かすだけ。

探るような視線を投げかけても、彼女は「せ、せんぱ、いっ…」と言うだけで、俺の気持ちは焦れる。

それに、付き合ってそれなりに長いというのに、彼女は未だに俺のことを”先輩”と呼ぶんだ…残念な気持ちと苛立ちとで、優しさを見失いかける。

「先輩って呼ぶなよ。ちゃんとくれたら、聞いてあげる。」

その言葉に、無子の肩は微かに震える…恥ずかしいのか、それとも怖いのか、もはや物も言えない様子で。

もっと意地悪したくなった俺は、両手の動きを再開させると、彼女は困ったよう「ぃ、いやぁ…っ」と、甘い声を漏らす。









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