「……白石、何ボーッと突っ立っとるんや?」

「今話かけんといてや。精神研ぎ澄ましとるから」

「なんやねんそれ」



なんだかんだいって、とうとう部活の終了時刻になった。なんでこういう時って時間が立つのが早いんだろう。部活しながら色々考えたものの、結局良いアイディアは浮かばなかったし。
でも部活が終わった以上、一度コートからは出なくてはいけない訳で。
ああ嫌だ。嫌な予感しかしない。




「ホンマ何しとん。はよコートから出なあかんて」

「嫌や。今出ても嫌な予感しかせえへんもん」

「……あぁ、アレか」


言って、謙也が指さした先には女子の群れ。
そう、先程から私がコートから出ない理由はこれだ。



「せやけど、まだあの集団の目的が白石やて決まった訳やないやろ?」

「いや、アレは俺や。絶対そうや」

「白石、そういうの何て言うか知ってるか?自意識過剰って言うんやで?」

「うっさいわヘタレ」

「なっ!へ、ヘタレちゃうわ!
ちゅーか、女からのチョコもまともに断れへんお前の方がよっぽどヘタレやないかっ!」

「うぐっ!?」


な、なんだと……。なまじ正論だから言い返すに言い返せない……っ!

だ、だったら!



「……分かった。俺はヘタレやないってとこ、見せたるわ」

「お、もしかしてあの中に突撃する気か?」

「……男見せたるでぇっ!!」



中身は女だけどな!

まぁとにかく、今はヘタレの汚名を返上することだけを考えよう。このままだと残念なイケメン(白石がイケメンなのは流石に否定出来ない)の称号までセットでついてきてしまうかもしれないからね。

あと一言だけ言わせて貰うならば……、私はヘタレじゃない、チキンなだけだ!





そして、私はコートの外へ向かって歩き出した。次第に女子集団に近づいていく。近づくにつれてやっぱりこわいなとか考えてたら、とうとう女の子の一人と目が合ってしまった。







「……あ、白石君出てきたで!」



彼女がそう叫んだと思ったら、あっという間に私は女の子達に周りを取り囲まれてしまう。
何これヤバくね?てか逃げ場ないんだけど!



「あ、いや。ちょっと待っ「ウチのチョコ受けとって白石君!」「何言うとん!ウチのが先や!」「待ちーや!ウチなんてもう一時間も待っとったんやで!?」「それを言うんやったらウチは三時間待っとったわ!」「なんやてぇ!?」「とにかく一年は引っ込んどき!まずはウチら三年からや!」「そんなん関係あらへんわ!」



あ、あのー。内輪で口論するのはいいんですけど、せめて本人の話くらい聞いてからにして貰えませんかね?
……まぁ、最初から期待なんかこれっぽっちもしてませんでしたがね!ちくしょう!






「「「「「白石君受け取ってくれるよね!?」」」」」


「……おん、おおきに」







結局私は折れた。いや、折られたと言った方が正しいかもしれない。




しかも大量のチョコを抱えて部室に入ったら、謙也からさんざんヘタレだと馬鹿にされ、他の部員からは冷たい視線を浴びせかけられた。






……もう来年からバレンタインは休もうかなぁ。







(さらにホワイトデーでもっと苦しむことになったのは、また別のお話)


[ 57/57 ]

|TOP


第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -