その後昼休みも終わり、授業開始直前になって私は教室に飛び込んだ。おかげで誰からもチョコを渡されることなく、事なきを得ている。よしよし。

そして授業中、私は現在の自分の状況を整理することにした。




とりあえず、私に彼女がいないことは既に一部の女子に知れ渡っており、彼女らはチョコを渡すことで私に自分の気持ちを伝えようとしている。
しかし、現時点で私には彼女を作る意思はない。その理由として、彼女が欲しくないと言うよりは、今はテニスに専念したいという思いの方が強いことが挙げられる。

だから、今告白なんてされても付き合うことなんてあり得ないのに。




(……問題は放課後だよなぁ)


先生の目もあるし、なんだかんだで学校にいる間は安全だ。問題は放課後、部活が始まってから。

……ま、嫌な予感しかしないけどね。




























そして、いよいよ放課後。私は途中で誰かに捕まることを恐れ、教室から部活へと全力疾走で向かった。そんな訳で、私は命からがら部室に滑り込んだのだが、そこには小春の姿しかない。
あれ、他のみんなはまだ来てないのか。



「あら、白石クン。今日はやけにモテモテやねぇ♪」

「何言うとんねん、こっちはさんざんやったんやで……」


ノリでとは言え、そんなふざけたことを言う小春に悪態をつきながら、私は鞄と大量のチョコを自分のロッカーに詰め込む。……で、入りきれなかったチョコは部室の隅に置いておいた。



「またまた、そんなこと言うてー。去年もモテモテやったんやろ?」

「アホ、そんな訳あるかい。そうやったらもう少し上手くやれとったわ……。そうやないから困っとるんやろ」

「あら、意外」


意外も何も、去年までは普通に五、六個貰えたらいい方だったよ。こんな少女漫画みたいな展開こそあり得ないってば。






「とにかく、俺としてはこれ以上チョコ渡されても困るんや。金色、なんかええアイディアないか?」

「なんや贅沢な悩みやねぇ。……あ、そや。そんなにチョコ貰うのが困るんやったら、普通に断ればええやないの?」

「それが出来たら苦労せんて……」



そんな可哀想なこと出来る訳ないじゃない。やっぱり断られるのって悲しいだろうしね。
でも、今の状況が続けばチョコも大変なことになるし、なによりお返しがとんでもないことになるよ。
さて、どうしようか……。



「とりあえず部活中は大丈夫やない?今悩んどってもどうにもならへんし、その時になってまた考えたらええやん?」

「……それもそうやな」


確かに一理あるかもね。思いつかないものは仕方ないもの。

まぁ根本的な解決には至らず、結局コートに向かう時は時間ギリギリ駆け込み作戦になったんだけどね!

ほんと、今日走ってばっかだな私!


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