「ホンマなんやねんこれっ!」


「まぁまぁ、落ち着きぃや。あとチョコ少し分けろや」


「これが落ち着いてられるかっちゅーねん!あとチョコはやらへんで」



今のところ、こちらは休み時間になる度に女子に追いかけ回されている。休み時間は休めないし、女子は怖いしで散々だ。
そう言えば前世に読んだ本の中で、原作白石の苦手なタイプは逆ナンしてくる子とあったっけ。もしかして、彼もこういった経験からそういう風に考えるようになったのかな。だとしたら本気で同情するよ、うん。



「まぁ流石にこんなとこまでは誰も来ぃひんやろうし、ゆっくりしとってええんちゃう?」

「いや、油断は出来ん。安心した瞬間に、ピンチっちゅーのは襲いかかって来るもんや」


今私たちがいるのは中庭にある茂みの中。
こんな土臭いところで昼御飯ってのも気が滅入るけど、安全にご飯を食べるためには仕方がない。
私は辺りを見回しつつ、万全の警戒の元弁当の包みを開けた。




「もしかして放課後まで逃げ切るつもりなんか?いくらなんでもそれは無理やて……」


「それでもやるしかないやろ」



弁当の唐揚げをつつきながら、私はぼやく。
流石にこれ以上チョコを貰っても食べきれる自信無いし。

そう思った、その時。





「白石君見つかった?」

「いや、こっちには居らんみたいや」

「はぁ、どこ行ったんやろ」


聞こえて来たのは、数名の女子の声とそれと共に近づく足音。
私は慌てて謙也に合図を送ると、茂みの中で息を殺して身を潜めた。そして、そのまま彼女らの様子を探る。





「ね、知っとった?今白石君って彼女居らんらしいで!」

「え、ホンマ!?」

「おん、ウチの友達が言うてたし間違いないやろ」

「じゃあ、今告ったらウチらにもチャンスあるってこと!?」

「せやなっ!」

「みんな必死になって白石君にチョコ渡しとるし、競争率は高いやろうけどみんな頑張ろうな!」

「「「おーっ!!」」」






などと言う、とんでもない会話が目の前で繰り広げた後、彼女らはその場を去っていった。

ていうか、少し待って欲しい。





「……あの子ら、なんで俺に彼女居らんって知っとったんや?」



一体どこでそんな情報が漏れたんだろう?
こんな話、極一部の人間にしか――……って。なんでそんなに冷や汗タラタラなんですか、謙也さん。





「……すまん白石。お前に彼女居らんてバラしたの、……俺や」

「お前かいっ!!?」



なんてことをしてくれたんだ謙也!
じゃあ、つまり今のこの状態はお前のせいでもあるってことか!


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