いつも通り朝練を終え、意気揚々と靴箱を開けての開口一番。



「えっ?」



私は一瞬何が起きたのかが理解出来ず、間抜けな声を出して靴箱の前で固まってしまった。

一度靴箱を閉めてからもう一度扉を開くも、やはりその結果は変わらない。更に私は靴箱の中を二度見したが、どれも結果は同じ。





「チョコ、入っとる……」




今日はバレンタインデー。女の子が男の子にチョコをあげる日だ。

このとき、私は一種の感動にうち震えていた。
まさか漫画の中で起きるような出来事が、自分の身に起こるだなんて思ってもいなかったからだ。流石に雪崩のような数ということはなかったが、それでも十分自慢出来るような数が靴箱に入ってる。あとは、中身が正真正銘の女の子からのチョコであることを祈るのみだ。

……え、なんでそんなことを祈るかって?そりゃ簡単、ここが四天宝寺中だからだよ。
だから、ふざけて男子が男子にチョコを送ったりとか普通にありそうじゃない?


……自分で言っててアレなんだけど、本当にありそうでちょっと怖くなった。





「……よっ…と」


とはいえ男子に敵は作りたくない。私は辺りに誰もいないことを確かめると、慌ててチョコを鞄に詰め込んだ。とりあえずは、これで誤魔化せるはず。

そしてそのまま教室に向かおうと、廊下を歩いていたら。





「し、白石君!これ受けとってくれへん!?」

「白石君!ウチのも!」

「ウチのもお願い!」



な、なんだこれ……。なんで廊下でこんなにたくさんの女の子たちがひしめいてるんだ?
つーか、これじゃ教室に辿り着くのが一体いつになるのか分かりゃしない。



「おん、おおきになみんな!」


とりあえずお礼だけ言ってから手早く受け取り、さっさとこの場を抜けることにした。一応優等生で通ってる身だし、遅刻はしたくないからね。


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