こうして私たちのバンド練習の日々が始まった。 はずなのだけど。 「ちゃうちゃう、ここはこっちがリードなんやからそっちの音は抑えなあかんやろ!」 「そないなこと言うたかて、んなこと出来へんわ!」 「なんでそないなことも出来んのや!」 「はぁ!?じゃあお前やってみせろや!!?」 「あーもう!二人とも喧嘩はやめぇや!」 「………」 あのー、すみません。 私帰ってもいいですか? なんていうか、最初から上手くいくなんて思ってはいなかった。けど、演奏する彼らがこんな状態なら、私が居たって意味ないと思うんだよね。音楽のこともよく分かんないから、アドバイスだって出来ないし。 「――とにかくっ! 本番まで時間もそないあらへんし、はよ合わせるだけでもせな!白石クン、練習出来へんで困っとるやないの!」 おお流石小春。よく気がつくね、ほんと。 「確かに、今この場に白石おっても何もすることあらへんな」 「せやなぁ」 そして君たちは今頃気付いたんだね。 まぁ期待はしてなかったけど、うん。 「とりあえず音源だけでも渡しとくわねっ。しばらくはこれ使うて個人練習しといてやー」 「ん、おおきに」 はぁー、どこまでも気が利くな小春は。四天王寺のヒロインなだけあるわ。 少なくとも、前世の私よりは女子力あると思うよ。 「あー、今日は時間も遅いしとりあえず解散しよか」 「おん」 そんなこんなで、一日目はあっけなく終了。 こんな調子で本番までに間に合うのかなぁ、と思ったのはここだけの話。 |