すっかり秋も終盤。肌寒い日も増えた、そんなある日のこと。 「なぁなぁなぁ!これ見てみー!」 「ん?なんやこれ?」 部活終わりにユウジが謙也に持って来た一枚の紙。会話してる二人の後ろから私が興味本位で覗いてみれば、なんとその紙にはステージの出し物の募集などと書かれているじゃないか。 まさか。 「木下藤吉郎祭のステージ募集や!ちゅーわけで、俺らでバンドせぇへんか?」 うぉ、やっぱり出し物するんだ……。しかもバンドって確かあれだよね。楽器弾きながらステージで歌ったりするやつ。 凄いな二人とも、楽器弾けるのか。 「お、ええなぁ!ついでやし他のやつらも誘おうや」 「せやな!あ、確か金色がベース出来たはずやで」 「ほぉー、やったらあとはボーカル探さなあかんなぁ」 うーん、なんだか楽しそう。私もなんか出し物に参加しようかなぁ。 あ、そういやクラスの出し物なんだったっけ……。 「なぁなぁ、白石」 あと部活の方でも出し物あるんだよね、確か。今年のテニス部は何するんだろ。確か去年は執事喫茶とか言ってたような。 ……一体誰得なんだ?これ。 「おーい、白石ー」 他は何かあんのかな。とりあえずクラスの方は手伝わないといけないだろーし。 ……あぁ、クラスのが変な出し物じゃありませんように。 「いつまでシカトしとんのやお前はっ!」 「痛っ!?」 え!?何!!? なんで叩かれたの私!? 振り返って見れば、若干ひきつった顔の謙也と、満面の笑みを浮かべたユウジの二人の姿があった。 ……なーんか、嫌な予感。 「白石も出ぇへんか?バンド」 言ってニッコリ笑うユウジ。 あぁやっぱりね! でも残念、私には決定的な欠点がある。 「いや、そない言うたかて俺楽器とか弾けへんし……」 ズバリ、楽器が弾けない。これならドヤ? 「あー、構へん構へん。募集しとんのはボーカルやから」 「ぼ、ボーカル……」 なん……だと……? つーかボーカルの何が大丈夫なんだ。余計にアウトじゃないか。自慢じゃないが、私はチキンな上に極度のあがり症なんだぞ(試合は除く)。 「なっ?それやったら大丈夫やろ?」 「……あ、いや俺は、「よっしゃ決まりやな!そうと分かれば早速練習やー!」 おいちょっと待て話は最後まで聞いとけ、いや聞いて下さいほんとお願いしますマジで。 「じゃあ明日の部活終わりから早速特訓やな!」 ……拒否権は、ないみたい。 |