そうしてなんだかんだで昼休み、午後の授業が終わり、迎えた部活の時間。 私はいつもと違い、少し緊張した面持ちでコートに立っていた。 「ほな今日はストローク練習からしよかー」 するとコートの角から監督の声が聞こえ、私はいよいよかとラケットを強く握りしめた。そしてコートのエンドライン上に立ち、軽く挨拶した後真っ直ぐに相手を見据える。相手、といっても球出しの子なんだけどね。 なんか手汗かいてきたなぁとか考えていたら、いつの間にかボールがこちらに向かってとんできている。 あ、ヤバい。 「……っ!」 そんな極限ギリギリの状態で打ったからだろうか。 私が追い詰められて打った球は、クロスのコーナーのオンライン上に入っていた。 なんか、今の感覚って試合の時の感覚と似てる気がする。 今なら何でも出来る、って思えちゃうような。そんな気分。 そのまま、もう一球、もう一球と私は次々に決めていく。どれもこれも、今までとは段違いなくらいいいボールばかり。 なんか気持ちいいや。 「白石、今のええ感じやったで!」 「ホンマ、この前見た時とはえらい違いやわ」 「おん、おおきにな。二人とも」 ストローク練習も一区切りしたところで、謙也とユウジがこちらにやってきた。 どうやら先ほどの練習を見てたらしい。 「なんや、試合のこと思い出したんか?」 「んー、というよりは身体が覚えとったって感じやな」 「まぁそんな感じやったな。自分で驚いとったみたいやし」 「おん、自分でもびっくりや」 試合中と言えどもそれほど長い時間だった訳ではないし、特に変わったことなんて無かったはずなのに。 本当にびっくりだ。 |