だが。










「はぁ!?体調不良で負けたやてぇ!!?」


「お、忍足!声大きいて!監督に聞こえたらどないするんや!」


「アホ!監督にはもうとっくに連絡はいっとるやろ」


「……う、」




そう。

なんと、あれだけ自信満々に試合していたにも関わらず、私はタイブレークの末負けてしまっていた。


いや、途中までは頑張って追い上げてたんだよ?
で、6‐5のあたりからあれって思ったら足が思うように動かなくなって点数とられ始め、タイブレークに入った頃には視界が翳み出し、終わったかどうかもよく分からないまま気が付けば救護室に運ばれてたというわけ。
ちなみに原因は熱中症らしい。健康には人一倍気を使ってただけに、これはかなり悔しかった。




「で、体は大丈夫なんか?」


「おん。少しだるいけど大丈夫やで」



救護室で起きた直後から少し頭が重いのだけど、それ以外は特になんともない。とりあえずは大丈夫そうだったから、みんなが待機している場所まで戻って来たんだけど。
残念ながら試合は全部終わってしまった後だった。最後まで見れなかったのがちょっと心残り。





「しっかし、なんや勿体なかったなぁ。もしその試合に勝っとったら、優勝しとったんは白石やったかもな」



「ん?どういう意味や、それ」



「あぁ。白石の対戦相手な、優勝したんや」




「……へ、」





ちょ、なにそれ。
じゃああの試合頑張ってたら、今頃優勝カップを手にしてたのは私だったかもしれないってこと?
そうだとしたら、辛すぎるんだけど。





「せやけど、ホンマええ試合やったらしいやないか。俺は試合被って見れへんかったけどな」


「あ、せや。忍足の方は試合どないやったん?」



「……準優勝のやつに、準々決勝で負けたわ」



「なんや、結構ええとこまでいっとるやないか」



「せやけど、緊張してもうて全然力出せへんかってん。むっちゃ悔しいわ」



「……せやな」




そりゃそうか。
私だって今めちゃくちゃ悔しいからね。
勝てた試合で負けるなんてさ。





「……せやけど、今回の試合でなんか掴んだ気するで」


「俺はとりあえずあがり症をなんとかせなあかんな……」


「ま、まぁ頑張りぃや」



お互いに色々と見つかったみたいだし、この大会に出たことによる収穫はあったのだと思う。




また一つ、夢に向かって前進だ。






(変化、そして覚醒)


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