それからの練習を、私はひたすら苦手克服のために費やした。


元々、この世界に生まれて四天宝寺中のテニス部に入部した以上、それは避けて通れない道だと覚悟していた。その上、どんなに足掻こうと、私が『白石蔵ノ介』である事実も変わらない。だから、私は私なりのテニスを完成させていこうと思っている。



かといって、私に他のみんなのようなハチャメチャなテニスが出来るとは到底思えない。
となると、結局のところ目指すことになるのは基本に忠実な、無駄のないテニスなのだろうけど。









「忍足、もう一本ええか?」


「白石ー……、もうこれで76球目やで?そろそろ別のコースも狙ったらどうや?」


「嫌や、俺が納得出来てへん」


「……さよか」



言って、うんざりした様子ながらもきちんと球を出してくれる謙也。確かに何十回も同じ作業繰り返せば疲れるよね。


謙也まじごめん。






だからといって、止めるつもりもないけどね。








「俺な、もう逃げへん言うたやろ?せやから、今の内にやれることはとことんやっときたいんや」


「……そないな言い方はズルいで、白石」


「ホンマ、自分勝手ですまん」


「謝んなや。別に責めとる訳やない」


「……おん」





謙也は優しい。かといって、甘えたりは出来ない。




私が目指すのは、全国。

だから、こんなところで立ち止まる訳にはいかないんだ。








試合は明日。

結果がどうなるかは分からないけれど、それまでにやれることはやっておこうと思う。

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