「あー、ちゃうちゃう!そこはもう少し強気で攻めなあかんて!」 「せやかて、とりあえずここは繋いどく方がええやろ?こんな無茶なとこからなんぼ攻めたって、絶対入らへんわ」 「せやから、その弱気な姿勢があかんのやって!」 という訳で。 現在、謙也先生のご指導の元、絶賛猛特訓中でございます。 とはいえ、先ほどから謙也の言ってることは無茶苦茶ばかり。 ちなみに、さっき受けた指導はショートクロスからのストレートを狙えとのこと。 ……あんなネット間際からストレート打ち込んだら、確実にネットもしくはアウトするわっ! 彼はきっと、私をこの世界の何処かにいるであろう、某テニス漫画の主人公か何かと勘違いしているに違いない。 確かにあの一年ルーキーなら、ドライブなんとかで確実に入るわな。 ……まぁ、単純に考えて私の技術不足な訳だけども。 それに加え、私は根っからのチキン(大事なことだから何回も言うけど)。 だから、そんな強気なとこ攻めたら間違いなくプレッシャーに負けてネットかアウトだ。 なのに。 「白石ぃー!そんなちんたら攻めとったら、あっという間に相手に先制されるでぇ!」 「分かっとるわ!」 謙也はあくまでも、攻めのテニスを私に求めてくる。 いや、私だって本当は分かってるんだ。 私に必要なのは、攻める勇気だってこと。 でも。 「……やっぱり、無理や」 「……白石?」 謙也が心配そうに私の方を見つめている。ごめん、謙也。 それでも私は。 「……俺は、忍足が思う程強くなんかあらへん!」 「ちょっ、白石!待ちぃや!」 期待に応えられそうにないんだ。 気がつけば、私はラケットを握り締めたまま走り出していた。 |