「……やるやないか」


「……そら、おおきにっ!」






三球目。



心無しか先ほどと比べると、少し打球が早くなった気がする。




しかし、謙也はきっちりと返してきた。





だけど、こっちだって反撃の準備は出来てる。







「……っ!」





今度はきちんとラケットに当たって返せた。しかも、初めて打った割にはスピードもそこそこある。

気付かない内に、随分とパワーがついてたみたいだ。







まさか返ってくるとは思わなかったのか、今度はこちらが打球がきれいに謙也の横を抜く。






「……」






そのまま後ろのフェンスに当たって跳ね返ったそのボールを拾い上げると、謙也はこっちをじっと見つめて、一言。





「……成る程な」








いや、何一人で納得してるのこの子。




「……訳が分からん。ちゃんと説明してくれへんか?」


そう言って説明を求めれば、謙也は急に照れたような顔になった。なんだ、可愛い顔も出来るじゃない。








「……監督がな、お前のこと気にしとってん。それで、どないなやつなんやろって思ったんや」


「……その結果が今の打ち合いかいな」



もしかして、殴り合い、もとい打ち合いで互いを知ろうとでも思ったのだろうか。何処の昭和ドラマだ。

ていうか、結局今の打ち合いでわかったことって、私がサーブしかまともに打てないってことと、まぐれ当たりのレシーブが出来るってことくらいじゃん。

一体謙也は今の打ち合いの中の、何に納得したんだろう。









「……なんや、急に変なこと言ってすまんかったな」


「別にえぇで。こっちかて、わりと楽しかったしな」




ちなみに、これは私の本音。なんせ、こちらの世界に生まれてからまとも(?)にテニスをしたのは今日が初めてなのだ。楽しくない訳がない。



それなのに、未だに謙也は申し訳なさそうな顔で項垂れている。やっぱり、謙也は基本的に良い子なんだろうな。ちょっと髪の毛は怖いけど。













……あ、そうだ。






「……せや。別にさっきのことは気にしてへんけど、一つだけお願いしてもええか?」




「なん?」















「俺たち、友達にならへん?」





そう言って私がニッコリ笑いながら手を差し伸べると、そんな私に釣られたのかどうかは分からないが、謙也も爽やかな笑顔を浮かべて握り返してくれた。



ちなみに今初めて気付いたのだけど、今までテニス部に友達っていなかったんだよね、私。
だから、謙也はテニス部の中では初めての友達ってことになる。











その日、私と謙也はとりとめのない会話をしながら一緒に帰ることにした。更には、明日も一緒に登校する約束までした。

なんだか、これぞ青春!って感じだね。



何はともあれ、ようやく部内での友達が出来たんだ。











明日からも頑張らないと!












(初めての友達は浪速のスピードスター)

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