「……で、話ってなんやねん。忍足君」




謙也に連れて行かれた先は、意外にもストリートテニスコートだった。

うわぁ、こんなとこあったんだ。ストリートテニスコートなんて初めてきたよ。



私が初めて来る場所に興奮してキョロキョロしてたら、謙也が急に私にボールを投げて来たので、それをなんとかギリギリでキャッチする。

ちょっ、危なっ!






「……ちょっと、打ちあってみぃひんか?」





……は?今何て言った?
打ち合う?謙也と?何故?




「……何言うとん。自分、知っとるやろ?俺は初心者なんや。まだまともに打ったこともあらへんのに、そないなこと出来る訳が、」


「……つべこべ言わんと、はよ打てや。サーブは白石、お前からや」




……まだ喋ってたのに途中で遮られた。なんという横暴。
というか、なんだか想像していた謙也と今目の前にいる謙也とのギャップがめっちゃ激しい。あれ、私が知ってるヘタレカッコいい謙也は何処へ?








「……どうなっても、知らんで!」



言って、私はほとんど投げやりにサーブを打ち込む。
今日たくさん練習しただけあって、サーブの調子は良いと思う。これなら、少しは通じるかも――





「……はっ!」





と思ってたら、謙也にあっさりと返された。

私の今日の集大成が!






その後慌ててボールを追いかけたが、久々のラリーの感覚に身体が全く反応出来ず、これまたあっさりと横を抜かれてしまった。







「……ふざけとるんか?なんで返さんのや」




無茶言うな!こちとらまだテニス初めて1ヶ月くらいやっちゅーねん!




「……なんや、期待外れやなぁ」











ぷちっ。











そこで、私の堪忍袋の尾がとうとう切れたらしい。





「……さっきから一体なんやねん!意味分からへんわ!」




叫んで、私はもう一度サーブを打つ。次は謙也のフォアハンドとは逆のライン、しかもギリギリの鋭いところをついた。まぁ、たまたまやろうけど。



しかし、そんなところを狙われるとは思ってなかったのか、謙也は私のサーブに反応出来なかったみたいだ。


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