side 謙也




「……なんやねん、あれ」



先ほどから初心者組のサーブ練習を見とってんけど。


一人だけ、レベルが違うんや。








白石蔵ノ介。







そいつは、みんなと同じような練習しかしてへん。せやけど、その練習量が他のやつの倍近くはあることを俺は知っとる。あいつが練習後も一人残って、素振りしたりランニングしたりしとるのをこっそり見とったからな。


……や、ストーカーちゃうで。









それにしても。










「あんなん、初心者のサーブちゃうやろ……」



下手したら、そこらにいる経験者組の奴らよりも上手いかもしれない、と思った。

正直言うと、経験者組は表向きは仲良さげにしとっても、その腹ん中ではいつ相手を蹴落とそうかちゅーことしか考えとらん奴らばっかりや。勿論、全員がそうとは言わんけどな。





せやけど、そんな奴らがひたむきに練習に取り組んどるはずがあらへん。









『いつ追い抜かれてもおかしゅうないで』









つまり、いつぞやの監督がいっとったことが、ホンマになるかもしれへんってことかいな。









「……白石。恐ろしい男やな」





しかし、それ以上にますます興味が沸いてきたのも事実や。さっそく、今日の練習後にでも少し話してみよか。


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