なんとなく、そうなんじゃないかと思うことは何度もあった。 白石蔵ノ介という名前には、聞き覚えがあった。 別に毒草だけという訳じゃないけど、色々な植物に心惹かれては植物図鑑をよく眺めていた。 前世で不健康だった生活を一新しようと、お小遣いを使って様々な健康グッズも買い漁った。 年々、成長していく自分を見て、何処かで見たことがある気がしていた。 とっくに分かっていたはずなのに。 前世で私は、何でも完璧にこなす『白石蔵ノ介』に憧れていた。 私も彼みたいになりたいと思っていた。 だから、彼みたいに何でも完璧にこなせる今世が楽しくて仕方がなかった。 ここには、何でも完璧にこなせる『私』がいた。 だが、この事実を認めてしまえば、今の『私』が消えてなくなってしまう気がした。 だから、自分は自分なのだと、この事実を心の何処かで無意識に否定していたのかもしれない。 しかし、この事実を認めてしまった今、もう今までのように目を背けて生きていく訳にはいかない。 「……蔵ノ介?」 急に下を向いて黙ってしまった私を心配してか、お母さんが不安そうに顔を覗き込んでいる。 「……大丈夫、大丈夫や」 その言葉は、お母さんに向かって言ったのか、はたまた自分に言い聞かせるために言ったのか。 自分でも、よく分からなかった。 (私は、一体誰?) |