「あぁぁッあ……」


悲鳴と言うに遜色ないソレ。
白い裸身を惜し気なく曝しながら、ビクビクと打ち震える様はこの上ない美観であると、跡部は思う。


「おら。まだおネンネするにゃ早ぇんじゃねぇの」


絶頂の余韻にけぶった琥珀から零れ落ちる滴。
それを指先に掬い上げ、耳朶へと舌を捩込んだ。


「そないに言うたら可哀相やん。なぁ、姫さん?」


ギシリとスプリングを鳴かせて乗り上げて来たのは、反対側。
力無く投げ出された両脚を指先に撫で上げ、その極上の感触に忍足が鋭利な瞳を細めた。


「ぁ……ん、ゆぅ……しぃ……」


縋るように両手で忍足の袖を掴んだリョーマに、甘やかな微笑が降る。
反するように、耳朶には舌打ち。


「俺様を差し置くとはいい度胸じゃねぇか。アーン?」

「しゃあないんちゃう?人望の差っちゅう奴や」


忍足に抱き起こされ、その胸元に招き入れられて。
リョーマの口からは安堵が零れ落ちた。
二人の男に一人の少女が思う様嬲られるというこの異様な光景。
それこそ下手なAVでなら有り得そうな光景だが、生憎これは撮影ではなく現実。
二人とリョーマがこういった関係になったのは一月と少し前。
それこそ、強引だった。
大会終了直後、唐突にマンションへと引きずり込まれ。
そして些か強引な告白。
──否、告白というよりも命令というが正しい。
当然、それを行ったのは跡部だ。
しかし、忍足がその場にいなかったかと言えば、否だ。
跡部の傍らにしっかりと佇んでおり、彼が口にしたのも跡部と同様の内容だった。
そして、リョーマが答えを出すよりも早く。
リョーマは“少女”から“女”にされた。
勿論、二人の手によって。
巻き込まれるように過ぎ去った初体験。
それは初心者に対して些かレベルが高すぎるものだった。
結局それから、どちらかを選べとの提示に答える事が出来ないまま。
こういった関係が続いている。
好きじゃない訳ではないのだと、リョーマは思う。
好きだとは思う。
無理矢理肉体を強いた男に好意を寄せるなど酔狂ではあると思うが、自覚してしまったものは仕方がないと開き直った。
しかし、『どちらが』と聞かれれば『どちらも』としか答えられないのが現状だ。
どちらが上回るかなど、比べようがない。
二人に対するリョーマの位置関係は、一月の時を経ても答えといえる答えにはならないままだった。


「おい。ボーッとしてっと知らねぇぞ」

「え……ひゃん!」

「ごっつい事ンなってまうで?」


甘やかなハイバリトンに思考を引き戻されてみれば。
体はいつの間にか反転させられており。
小振りだが形のいい胸には後ろから忍足の手が伸びて。
開かされていた脚の間に割り込んだ跡部の長い指が、無遠慮に秘部に突き込まれた。
ビクッと跳ね上がった細い肩が、意識に霞を投げる。


「びちゃびちゃじゃねぇか。まだ足んねぇらしいなぁ」


舌なめずりしながら目を細めた跡部を直視して、リョーマの子宮がキュンと疼いた。
生来、怜悧にして端正な跡部の容貌。
神が格別の寵愛を注ぎ、丹精込めて創り上げた芸術かのようなその面差しが、俗物的にして淫猥な獰猛さを宿す。
捕食されんばかりの戦慄がリョーマの胎内にカッと熱を点す。
その瞬間の、酷く倒錯的な悦楽に支配される感覚が、何よりも心地いい。


「姫さんは淫乱やもんな?弄らるぐらいやったら足りひんなぁ?」

「あぁぁ!んっンッ」


甘やかな吐息とともに乳房を形が変わるくらいに強く揉みしだかれて、息の抜けるような響きが唇を滑り出た。
耳朶に直接吹き込まれる言葉は、その甘い声音と相俟って酷く淫靡で。
背筋を舐め上げるような快楽にリョーマの顎が反り返った。
忍足は跡部と違って喰らい尽くされんばかりの危うさはない。
けれど、それを補って余りあるだけの甘さがある。
そして、甘さに内包された読み取る事の出来ない残虐さがある。
言ってしまえば、甘い毒のよう。
匂いに釣られて近付けば、内側からジワジワと侵食してくる。
直情的であるだけ、跡部の方が解りやすい。
──耐えきれるかの問題は別として。
甘い笑顔のままで媚薬を盛られ、朝まで啼かされ続けたのは記憶に新しい。
読めないからこそ恐ろしく、だからこそ気持ちいい。
二人は動と静の象徴のようだ。


「あっあっあっイ、イク!イクぅ!」


秘部をグチャグチャと掻き乱され、跡部の口に右の乳首を噛まれ。
左の乳房をグリグリと痛い程に揉まれ、忍足の唇が耳朶や首筋を嬲る。
訳が解らなくなる程の快楽。
思考回路なんて、一切が消え失せて。
ただ卑しく腰を振って。


「跡部。イかしたるん?」

「アーン?んなわけねぇだろ。簡単にイかせるなんざ、つまんねぇだろうが」

「せやなぁ。お願いぐらいしてもらわんと。それか、態度で示して欲しいなぁ?」


頭上で交わされる美しい男たちの会話は、その容貌に淫靡な空気を纏わせるもの。
悦楽に打ち震えるリョーマには、その会話の殆どが理解出来なかったけれど。


「イクぅ!いやぁっ!イかせてぇ……!」


跡部の指も、忍足の手も。
全ての刺激が唐突に消え失せて。
そして始めて涙に濡れた瞳を二人へと向けた。
けれど二人の男は種の異なる笑みを滲ませたままリョーマを見下ろすだけ。
滾る熱に浮かされ、疼く体を持て余して。
左手で跡部の袖を掴めば、彼の長い指先がリョーマの小さな顎を持ち上げた。


「イきてぇなら……解ってんだろ。散々教えたよなぁ?」


涙で潤む視界の向こうで、酷く残虐な笑みが見えた。
イきたいなら、イかせてみろ。
それが跡部の教え。
生来サディストの気があるらしい跡部だからこそ。
そして、それはリョーマにも当て嵌まる図式。
震える体を起こし、蕩けた瞳もそのままに跡部の股間へと踞った。
マゾヒストの気があるらしいリョーマであるからこそ、跡部をして好ましいと思えるのかもしれない。
思うままにならない唇で跡部のズボンのチャックを下げ、ゆっくりとその奥を暴いて行く。
現れたモノはいっそ凶悪ですらあって。
赤黒く変色したソレは、いっそグロテスクな凶器そのものだ。
けれど、リョーマが感じたのは恐怖ではなく。
凶悪なまでのソレに犯される──いっそ狂喜じみた愉悦だった。


「んっ……ん、ぅん」


躊躇いなく咥え込んだモノは既に十分過ぎる程に張り詰めて。
先端しか咥えるに至らない。
けれど、咥えられる限界まで飲み込めば、ビクリと咥内に脈打つ。
青臭い雄の匂いにすら体温が上昇して。
無意識にリョーマの腰がフルリと揺れた。
そして、背後で揺れた気配。


「ん、ふ……ん……んあァぁ!」


咥えた男根に愛しげに舌を這わせたと同時に。
背後から突き入れられた灼熱。
派手に跳ね上がった肢体が、弓なりに反り上がった。


「っ……めっちゃ締まるわ……」


掠れた感嘆が背後から降って来て。
キュンとリョーマの胎内が忍足を食い締めた。


「あっあっあっ、やっあぁぁ!」


ガツガツと容赦なく揺さ振られ、口端から垂れ流された唾液を拭う事も出来ず。
ただ腰を振り、掠れた嬌声だけを零した。


「おら。サボんじゃねぇよ!」

「んんっ!んっンっんっ」


忍足に気を取られて律動に悦楽を享受すれば、咥内へと再び突っ込まれた。
前には跡部、後ろには忍足を咥え込みながら。
リョーマはただ抗えない強烈な快楽に翻弄されるしかない。
室内に満ちる濃厚すぎる雄と雌の臭い。
荒い吐息は少女を挟んで。
男二人に犯されながら、ままならない思考の元にリョーマは思う。
ただ、気持ちいいのだと。
食い荒らすような男に無理矢理捩込まれるのも。
ゆっくりと締め上げてくる男に自我が崩壊せんばかりに蕩かされるのも。
堪らなく気持ちいい。
凄絶な“女”の色香を撒き散らすリョーマは、気付かない。
貪欲なまでに男を食むその様こそが、二人ならず数多の男を狂わせるのだという事に。
そして、撒き散らされた惰性の証の中。
リョーマが浮かべるのは、淫靡にして淫蕩な──愉悦の笑み。






◆◇◆◇







食い荒らされてしまえればいい。
ゆっくりとした侵食に溺れてしまえればいい。
気持ちいい事をしている。
それの何がいけないの?
二人が好き。
二人のセックスが好き。
二人がくれる恐怖が好き。
二人の全てが……俺を食い荒らして蕩かしていく感覚が……堪らなく、好き。




END


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