ってなに考えとんねんアホかどこみてんねんしっかりせぇ俺!浪速のスピードスターの名ァが泣くで!落ち着け落ち着くんや!とかなんとか。
腹の中で自分を鼓舞してみるものの、煙を上げはじめた脳と涙目に収まる気配は見えなかった。
そんな謙也の足元で、思案に暮れていた爆弾美少女がパチリと一度瞬き。
そしてどこか得心がいったようにウムと大きな頷き。
心なしか柔らかな唇が、尖って見えた。


「……謙也さんて、俺のこと嫌いなんだ?」

「………………………は?」


たっぷりの間。
後、本日一番の間抜け面と声がお披露目。
ポカン、と開いた口と瞳が、美少女を凝視。
なんだなんだ今なんと言った彼女は今なにを言った。
グルグルと回らない思考を総動員して、謙也の脳がフル回転。
キライってなんやろか。
きらい……きらい……俺が……越前を……きらい……?
そうして、間抜け声からたっぷり三分後。


「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」


漸くリョーマの言葉を把握。
飲み下してみれば、なんたること。
目の前で拗ねたように唇を尖らせる少女は、とんでもない勘違いをしてくれている。
あまりの勘違いに奇声も上がろう。
転がったままで起き上がる気力もないけれど。
全身で否定した。
後頭部を床にゴリゴリ擦りながら全力で頭を振った。
ブンブン音が鳴るほど腕を振り乱して転がった椅子に手をぶつけた。
それだけ必死に否定した。
嫌いだなんて勘違いされては堪らない。


「ちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうちゃう!!嫌いなんかやないし嫌でもない!全然嫌いなんかちゃう!!」

「……ホントっスか?」


懸命の否定を受け取ってくれたのだろうか。
まだ若干の不安を眉尻に残したリョーマが、謙也に目線を合わせるべくしゃがむ。
そうして、先より近くなった美貌が悲しげに首を傾げてくるのだからもう。
謙也の思考回路を吹っ飛ばすには、十分すぎた。


「ホンマやホンマ!嫌いなんかとちゃう!全然ちゃうから!」

「……じゃあ俺と付き合いましょ」

「当たり前や!嫌いなんかやな……い……え……?」


矢継ぎ早な弁解が、急激に萎む。
なんだか今、とてつもない事が起きた気がする。
なにか、なにかとてつもなく重大な事が。
ハタと目を見開いた謙也の前には、愛らしい顔を満開に綻ばせた──小悪魔がいた。


「決まり。じゃあ、今からアンタは俺の恋人ってことで」


よろしく、謙也さん。
ニッコリと。
恐ろしく愛らしい顔を、恐ろしく綺麗に咲かせながら。
爆撃機は、最後の兵器を投下してくれたのだった。


「は……え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


本日幾度目になるのか。
謙也の全身全霊をかけた絶叫は、完全なる敗北宣言に他ならなかった。






◆◇◆◇







突拍子もない。
突飛な事を言う。
突っ込みをいれる。
この突撃彼女、どうしてくれよう。






恋愛だろうが試合だろうが待ってるのも不安になるのも嫌。
だったらコッチからしかけてやろうじゃん?
イケると思ったら即突撃。
さぁ覚悟はいい?
手加減なんかしないよ。
捕まえた!






-END-


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