ゆっくりと、涙の残る瞳を微笑ませた。


「ありがとう……手塚さん」


──大好き


強い彼が強くいられるように。
笑っていよう。
迷惑をかけないように、手塚が苦しまないように。
この手に、触れて貰えるように。
落ちてくる温もりを受け止めて、リョーマの唇が甘やかな悲鳴を。
抱きしめた背が、ゆっくりと落ちてきて。
再び、言葉の排出を拒まれて。
だから、言葉の代わりに。
大きなその背を、抱きしめた。






◆◇◆◇







広大な世界へ蝋で固めた羽を羽ばたかせたイカロスは、太陽に拒まれ地に墜ちた。
太陽は温かく、そして無慈悲に大地を照らす。
自らに害を為す者を、その熱に灼き尽くして。
けれど、イカロスに蝋を与えた者は誰か?
地に墜ちたイカロスに答える口はなく。



真実は無慈悲な太陽の中、蝋とともに溶けて消えた。




END









→後書き

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