冷たいタイルの上に落ちる白い肢体に何を思うわけでもなく、脇腹を軽く踏みつける。震わすことさえ止めてしまったそれはあまりに面白みに欠けたけれどそれでもコポリと泡のように細々と湧き上がり体内を上ってゆく感慨は不快なものではない。白い身体。白いタイル。白いシャツ。砂糖菓子のように甘ったるい白さではなく、何処までも潔癖で絶対的な拒絶を彷彿させるがゆえの蠱惑的な白さ。何処までも汚せる領域なのに何一つ変わりはしない歯痒さ。奥歯を噛み締め笑う。口元を引き上げる。拳を握る、開く、握る、開く。嗚呼、と頭の中に住み着いた狂人が嘆息した。その狂人は錆びたナイフで丁重に頭の壁を抉っていって。罅割れそうだ。腫れ上がった折れた足に胸が痛むよ。がつんがつん、壁が崩れる。健気に信じる姿に胸が疼くよ。がつんがつん、温度の無い殺意の音がする。

「なんか言って」
「………すき」
「うん」
「あいしてる」
「うん」
「ころして」
「イヤ」

沈黙沈黙沈黙。青い瞳が赤い瞳を一瞥して瞳を閉じた。息を吐く音。其れが嗚咽に変わるのを、肢体が壁がシャツが無残に汚れていくのを、狂人が喰いちぎる血流の音とともに待っている。(みにくくなればどこへもいけないきっと)