街が歪んでいく。胎児の形をした夕陽が昇る。私は走る。空は真っ青のなのに夕陽は真っ赤で滴り落ちて。鮮やかな森は枝を伸ばして私の心臓を串刺しにしようと狙っている。大きな瞳が仰いだ。お前は誰だ。灰になった景色が蠢いて、終わるのは誰かじゃないから私は悲しい。蹴り崩した砂山は幻想を飲み込んでいくけど世界は創られ続けていくからしかたがない。疲れたから走るのを止めた。蜷色、暗赤色、群青色。壁に塗りたくられたそれは真実を伝えようとするけど翳んだ視界に未来はないから唾を吐く。子どもの泣く声がとても不愉快。無表情に佇む案内人は私を乗せてはくれない。通り過ぎるものだけが美しく、手のひらに残った残滓は酷く醜く誰かを憎むにそれは十分な引き金だった。漆黒の銃が泣く。私は泣かない練習をする。うしろをみないようにする。微笑むことをしないようにする。鉄の塊を掴んで切っ先を向けた。手のひらは冷え切ってしまって。さよならって笑えばいいのにここには鏡がないから去ってゆく後姿を永遠に続けた。お前は誰だ。私は何処に。