膝を強引に割ったところでとうとう糸が切れたのか「先輩、先輩」と泣き喚き始めたので頬を殴った。容赦なく。泣き声だか呻き声だか分からない悲鳴が漏れる。後ろ手に縛られた腕を自由にしようと必死に足掻く姿は上手い具合に沖田の嗜虐性を抉ったが、表情を変えることもなくもう一度殴る。助けを呼ぶ声をなくして、堪えるように泣く姿が同情に値すべき愛おしさだったので素直に「かわいそうに」と呟くと金糸のかかった肩が一層震え、青い瞳は怯えと一筋の懇願や期待を宿して沖田の姿を捉える。この少女の最も同情すべき点は先ほどの台詞の声音の無感動さが単なる虚飾であり、今目の前の男がこれ以上なく上機嫌だということを理解できないところだろう。(彼女の悲劇)