やや暴力。また子が鼻血出してます。そんなに暗い話ではないです。山崎がとばっちりでかわいそうです。







君への愛で世界を廻そう




「私、あんたのことだいきらい」

ふわりと揺れる金髪と、ぎゅっと結ばれた淡い色の唇に、揺ぎ無い力を宿した瞳。悔しいけれど少し見惚れた。その白い頬に拳を叩き込んでやりたいと思った。短いスカートから伸びた足を板チョコを割るように折ってやりたい。その足の着いた地面から生えているタンポポとかがものすごく気分を不快にさせる。あすふぁるとーにさーくはなのーように。俺だったら除草剤まいて全部枯らしてやるのに。なぜかというと、俺は惨めったしく息絶えたものだって、強く生きる雑草と同じぐらい愛していける博愛主義者だから。

「俺はあんたの好きなもの全部だいきらいでさァ。一つ一つ踏み潰しに行きたい。」
「じゃぁ、あんたのこと好き」
「それはそれは身に余る光栄で」
「はやく潰れて欲しいんスけどー」
「その前にあんたを潰そうかな」

ぱぁんといい音。弾けるような。いっそ弾けてしまえ。内臓とかぶちまけてしまえ。コンクリートに散らばったレバーみたいな肉片を俺が足でかき集めて唾を吐いてやるから。そんなこと俺以外に誰ができる?そういう幸福を感謝するべきだ。神にじゃなくて、この俺に。
あぁ拳にすればよかったと、掌で叩いてから気づいた。学生鞄が横薙ぎに襲ってきたので、左腕でガードする。右腕で金髪を引っつかむ。その後ろでたまたま通りかかった山崎があんぐりと口を開けていた。叫んだり止めに入ってみろ殺すぞという視線を送ったけれど、どうやら慈悲深い警告は伝わらなかったらしい。コチラへ駆け寄る姿が見える。

「あんたこれ地毛?」

言いながらもう一発殴ろうとしたら、臑を蹴られた。顔が近い。睫毛も金色。じゃぁ地毛なのか。蹴りに勢いを殺がれて少し顔を顰めつつ、殴る。今度は拳で。髪を掴んだ手はとうに離していたので、来島は殴られたそのままの勢いでぐしゃりと地面に伏せった。スカートがめくれて白い下着が見えたので、小ばかにするように口笛を吹いてやる。

「ちょ、あんたなにしてんですか!」

空気の読めない山崎が俺と来島の間を割ろうとするので、人の忠告という善意を蔑ろにした罰として鳩尾に思いっきり蹴りをくれてやろうとしたのに、その前に復活した来島の蹴りが山崎の顔面に入った。KO!と文字が見えたのは昨日のゲームのやりすぎか。山崎は仰向けに倒れていく。俺は頭の中でストUの音声を再生してやる。エコーの掛かった断末魔はとても空気が読めている。こちらを向いた来島の顔が赤く濡れていたので自然と口角が上がった。

「へー。鼻血も似合うんですねェ。」

構わずセーラー服で拭うものだから白い布地に血が移る。腹部の辺りに赤い水滴のような後もちらほら。陰気な花びらみたいで悪くない。いつもそうしていればいいのに。と少し思った。そしたら優しく慰めて、ハンカチの一つも差し出してやるのに。でもその傷は俺が付けたものじゃなきゃ駄目だ。俺が傷つけて、俺が慰める。素晴らしき循環。そうやって世界が回ればいい。この世界の神は相変わらず所在不明だけど、俺はここにいるだろう。

「変態」

右の頬を血の跡で染めた来島が、今度は吐き捨てるように言う。嫌悪感で顰められた眉に、鼻で笑って答えた。そりゃぁ抱きしめられたらいんだろうけどそういうのは俺の道理じゃないから仕方が無い。