志々雄さまと由美さんの例のシーンのパロです。るろ剣未読のかたはネタバレ注意。




「甘ぇよ銀時」
その声と同時に来島の瞳が見開かれ、体が弓なりにしなった。ほんの刹那遅れて、銀時の腹部を凶器が抉る。
「昔っからな」
高杉を護るように間に入った来島ごと銀時を貫いた刃が引き抜かれた。銀時は血を吐き、そのまま地に伏せる。来島は高杉に抱きとめらるように、その腕の中に落ちた。血が、舞う。銀時のものか、来島のものか分からない。ただ確かなことはある。疑問が確信に変わり、感情がはち切れたころ、地面を引っ掻き、肉を喰いちぎる勢いで歯噛みしながら銀時は顔を上げた。出血が酷い。動けばその分力が抜けていく。それでも、叫ばずにはいられなかった。
「た、かすぎ…っ!てめぇを信じるやつを裏切ってまで、そこまでして…!!」
「裏切る?っは、銀時ィ、てめぇのものさしで語るんじゃねぇよ。」
高杉が来島の髪を梳く。その所作は先ほどの獣のような殺意と憎悪からは程遠い、穏やかなものだった。ほんの少し、微笑んでいたかもしれない。そして顔を上げ、銀時の憤怒を歯牙にもかけない超然とした笑みを向ける。
「こいつは誰よりも俺を理解し、俺は誰よりもこいつを理解している」
澱みなく言い切る言葉は、時と場所が違えばそれは愛の告白であっただろう。いや、むしろ今この瞬間であるからこそなのか。高杉は、来島に致命傷を負わせた手のひらで来島の身体を強く抱きしめた。来島はそれに答えるようにゆっくりと微笑む。血が溢れ、確実に死に至るであろう傷口などなんのことでもないというように、いつもと同じようにやわらかに。散ることを知っていながら咲く花のように、綻ばせた。
血の伝う唇をかすかに動かし来島が高杉に囁く。そして、そっと、震える指先で包帯の解けかけた左目をなぞった。その聖域に触れたのは初めてのことだったが、高杉も拒みはせずに隻眼を細めて来島の手を取る。来島はもう一度だけ笑みを深くし、目を閉じた。その手からだんだんと力が抜け、命が消えていくのを、高杉は直に感じ取っただろう。それでも眉一つ顰めることなく、来島の閉じられた瞳を見ていた。もう開くことは無い。もう動かない。決定的な終わり。それを確認するように。高杉が先ほど来島がしたように、かすかに囁いた。来島は、答えない。
来島の言葉は銀時にも新八にも高杉以外の誰にも届かなかった。しかしその場にいる誰もが、その内容が恨み言などではないと分かっていた。それがいっそう悲しかった。二人満たされた世界で、なぜか未来だけが抜け落ちた美しい悲劇だった。
どうしてっ、と銀時が悲痛に叫ぶが、高杉はかすかに笑うだけで。それが嘲笑なのか、自嘲なのか、はたまた彼なりの涙なのか高杉自身もきっと知らない。





アニメ150話を見て調子に乗った。