「王子様にはなれねーなぁ。だって」
乳房を乱雑に鷲掴まれ、少女の肩が震え金糸が揺れた。ぎゅっと瞑った瞳からは涙が落ちて。噛み締められた白い唇は痛々しいが男の中の嘲笑を満たすには事欠かない。愚かな夢物語も。その陰惨な残滓も。ついぞ叶わぬだろう果てない世界の一握りの希望も。
「女の子だから」
ひとつひとつ区切り言い聞かせるように男の低い声音が告げる。少女は濡れた眼を開き、男を見た。男の赤い瞳は無知な子どもを観察する愉悦を被り、そこに映るのは哀れな少女。強気に睨んだところで誰よりも気高い王子様はどこにも居ない。男の手のひらが乳房から離れ段々と下肢に滑るように下りていくのを認め、肺を絞る。
「や、めろ」
引きつった弱弱しい声音を恥じる間も無く指先がショーツの上から性器をなぞる。他人に触れられる感覚に少女は吐き気さえ覚えた。この後何が起こるかを知っているから、背筋が粟立ち、白い肢体が震える。縛られた腕を軋ませ、しかし逃げようとも逃げられない。それは王子様になろうともなれない束縛の形と同じだった。
ショーツを避けて、中に入り込こみ生身で荒らす指にとうとう悲鳴を上げた。信じていたものが罅割れ、しかしそれにくず折れる慈悲さえ与えられないまま。身も世もなく泣き喚く少女に男が謳う。
「王子様になりたかったお姫さまは悪い魔法使いに食べられてしまって、」
誰も侵したことのない場所に、男は猛った雄をあてがった。少女の瞳が翳る。喉から絶叫。密やかな夢の終わり。
「王子様にもお姫さまにもなれませんでした」
強引に挿入し、蹂躪する。奪われた残骸の赤い血が滴る。痛みと絶望に弓なりに身を捩る少女の痛切な悲鳴が何もかもを奪いとった男の胸中を内包し、言葉を続かせた。
でも大丈夫。と男は柔和に微笑む。犯す手のひらは優しく少女の涙を拭った。瞳の赤は穏やかだった。その静謐は狂気だった。
「俺が守ってやるよ、ずっと」



( 滴 る 夢 は 蜜 の 味 )