くまのぬいぐるみの名前を入れてね★





 やあ、ぼくはくまのぬいぐるみ!くるまじゃないよ、くま、くま、くまのぬいぐるみだよ。
 僕の持ち主は来島また子ちゃん。また子ちゃんがママのお腹の中にいる頃からずっと一緒に居るんだ。産まれてくるまた子ちゃんのためにって、パパとママがイトーココノカドーから連れてきてくれたんだよ。
 また子ちゃんが今よりずっとずっと小さいころ、動物園にも遊園地にも楽しいところはどこにでも僕を一緒に連れて行ってくれたよね。遊園地で迷子になったぼくを泣きながら見つけてくれた時のことを思い出すと、綿しか入っていないはずの身体がぽかぽかするんだ。本当だよ。

 そんなまた子ちゃんも今年の春に高校2年生になったんだ。昔みたいに一緒におでかけすることはなくなったけど、また子ちゃんはベッドの上に僕をおいて、たまに撫でてくれたり、ぎゅっと抱きしめてくれるよ。おしゃべりはできないけど、気持ちは通じてるんだ!また子ちゃんの嬉しい気持ちも、悲しい気持ちも、ぜんぶわかるよ。だってぼくたちはずうっと一緒にいたんだもの。
 高校生になったばかりのころは学校になじめないみたいだったけど。っていうか基本的にまた子ちゃんは学校生活というものになじめたためしがないし高校に入学したこと自体が奇跡のようなものだった。そのうち中退してパチ屋のバイト店員になって変なパチンカス野郎もしくは経営のほうのあれのあれなヤクザ野郎にひっかかって最終的に風俗に売られちゃったりするんじゃないかってすっごくすっごく心配だったんだ。そんな心配は杞憂に終わって、また子ちゃんは今では毎日嬉しそうに学校へ行ってる。お部屋でしている電話の内容から察するにどうやら彼氏ができたみたい!
 また子ちゃんの初めての彼氏。名前は晋助先輩。あーあー、ちょっとやきもち焼いちゃうな。また子ちゃん担としてはぼくのほうが古参なわけだし、ぼくぐらいになると出産というデビュー時からまた子ちゃんを支えてきたといっても過言ではないわけだから、ぽっとでの新参にわか彼ピッピ野郎に動じる必要なんかない。全然ない。平気!平気!大丈夫!!マジで!!

 しかし、まさかこんなヤクザ予備軍みたいな雰囲気の男を連れてくるとは思わなかったよね!高校を中退するという選択を選ばなかったのに、ヤクザ野郎というルートからは逃れられなかったんだね、また子ちゃん。
 初めてお部屋に招いた彼ピッピ。なしにろ眼光が鋭すぎる。どんな過去を背負っていたらそんな悲しい瞳になるんだよ。君の心はひび割れたビー玉かよ。左目の眼帯は絶対にMEBACHIKOではないだろう。確かに実写化するなら硝子の少年が演じるのかな?って感じの綺麗な顔だちだし、低めの声も一人乙女ゲーム作れちゃうぐらいにかっこいいけれども、雰囲気明らかにヤバイやつでしょ、これ。今、また子ちゃんが嬉しそうに受け取ったラムネ菓子、本当はアブナイ薬だったりしないのかな???ぼくはとっても心配になってきた。
 ぼくの不安をよそに、また子ちゃんはStay with meとばかりに晋助先輩を見つめ、そして、ふたりはちゅっと触れるだけのキスをした。わぁ!ふわふわの心臓がドキン!と跳ねる。(この心臓というのは実際には存在しないので比喩表現だよ!)
 で、でもぼくだってまた子ちゃんとチューしたことあるし!!ありますし!!??
 ヤクザ先輩の手がまた子ちゃんの制服の下に入り込んでまさぐる。キスはどんどん深くなって、唇同士がぬかるんだ音を立てる。セーラー服の下にある腕は蛇みたいにまた子ちゃんの身体を這いまわって、糸を引きながら離れたあかいの唇から甘い吐息が漏れたところでぼくは理解した。ひとつの真実にたどり着いた。そう、真実はいつもひとつ!

 これは…間違いなく…お、お、おセックス様だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!

 うおおおお前うちのまた子ちゃんになにしとんじゃい!!!って包丁を振り回そうとしたところで(この包丁を振り回すというのは実際には包丁もないしぬいぐるみのぼくには持つこともできなからそういう気持ちだという意味だよ!)、晋助先輩がまた子ちゃんの耳元でなにかをささやく。そして、また子ちゃんは薔薇色の頬をますます染め上げて、恥じらいながらも、スカーフを解いた。
 ぼくは理解した。謎はすべて解けた、じっちゃんの名にかけて!

 お、お、おお、おま、処女じゃなかったんか〜〜〜い!!!!

 また子ちゃんが愛読しているまゆたん先生の漫画では、大人の階段上ったシンデレラは次の日には周囲のモブたちに「あいつ、急に綺麗になったよな」とか言われてるからてっきり非処女になったとたんになにか劇的な変化があると思っていたよ〜〜〜〜!!ぼくぬいぐるみだからそういうのわかんないんだよ〜〜〜!!!もし、ぼくがくまのぬいぐるみじゃなくてユニコーンのぬいぐるみだったらご自慢の角でまた子ちゃんの心臓を一刺ししていただろうからまた子ちゃんは命拾いしたよね〜〜〜!!!(豆知識:ユニコーンは乙女じゃない女が嫌いな重度の処女厨だから、経験済みだと分かったとたんに殺しちゃうんだ!)

 そうこう僕が現実逃避をしている間にまた子ちゃんははだけた格好のままベッドから下りて床にぺたんと座り込んでいた。くつろげたボトムの間から、ぬっと顔をだした晋助先輩のちん…ちんあなごくん。それに愛おし気に唇を寄せるとぱくりと口にくわえた。
 また子ちゃんがまだものの分別がつかない頃、ぼくの手足をおしゃぶり代わりに小さなお口であむあむしてたよね。そんなまた子ちゃんが今は獰猛なちんあなごをあむあむしているなんて、そんな卑猥な音を立てて、可愛い舌でぺろぺろして、豊かに育った胸の間に挟んで、あ〜〜〜〜〜〜やめて〜〜〜!!!やめてよ〜〜〜〜〜!!!!!!!また子ちゃんの成長をぼくはいつも楽しみにしてきたけど、こんな成長はみたくなかったよ〜〜〜!!!
 ちんあなごをほおばるまた子ちゃんは、たまにちらちらと晋助先輩のことを見上げる。先輩が気持ちいいかどうか様子を窺っているんだと思う。そうだよね、また子ちゃんは昔から気持ちの優しい子だから、空気の読める子だから、思いやりのある献身的な子だから!晋助先輩はよしよしするみたいにまた子ちゃんの頭をなでてあげる。うぅ、よかった。髪の毛ひっつかんで、オナホみたいに扱う男じゃなくてよかった。ぼくはもうそういう最悪の中のよかったさがしをするしかなかった。

 そんな最悪の中のよかったさがしをたくさんして、まだまだ探す気ですか?それより僕と踊りませんか?夢の中へ夢の中へ行ってみたいと思いませんか〜うふっふ〜うふっふ〜今すぐ連れてってーーー!!と正気を失うことを望み始めた頃に、とうとうその瞬間は訪れた。
 晋助先輩は、散々可愛がったまた子ちゃんの身体を自分に向き合わせると唇を重ねる。だんだんと深くなるそれの合間、また子ちゃんは堪え切れないように、くぐもった甘い声をあげた。晋助先輩の愛撫が続いているからだろう。唇を離すと、また子ちゃんが、少し腰を上げた。晋助先輩が臨戦態勢のちんあなごに左手を添える。左手は添えるだけ!なんて冗談を言っている場合ではなかった。もうなんか今まですべてのことが冗談であって欲しかったけど、冗談ではなかった。
 獰猛なちんあなごが…また子ちゃんの…また子ちゃんのイソギンチャクにあ〜〜〜〜!!!あ〜〜〜〜〜ちんちんあなごが〜〜〜〜!!!!!

ホールインワーーーーン!!!

 また子ちゃんのイソギンチャクが太いちんあなごをぬぷぬぷと飲み込んでいき、すべて収めたころ、艶めいたため息がこぼれた。晋助先輩に促されて、淫猥に腰をふるまた子ちゃん。最初はこわごわとしていたそれは、自ら快楽を追うように貪婪なものへと変化していった。ゆさゆさと先輩の上で揺れるまた子ちゃんを目撃しながら、ぼくは遠い日の光景を見ていた。
 そう、また子ちゃんが小学生になったばかりのころ、家族で牧場に行ったね。また子ちゃんはぼくのことも連れてってくれたんだ。牧場の乗馬コーナーでまた子ちゃんはぼくと一緒に乗りたがったけど、危ないからってお母さんに預けてくれたよね。ぼくも本当は一緒に乗りたかったんだよ。自分じゃ手が振れない僕の代わりにお母さんが僕の手を握ってまた子ちゃんに振ってくれたっけ。懐かしいね。また子ちゃんは今でもお馬さんに乗るのがとっても上手なんだね!!!うわーーーーん!!!!
 かつて釈迦は苦行によって悟りが得られるという考えでとてもすごい苦しみに耐えていたそうだけど、この苦行によってぼくが得られた悟りは、この世界に神なんていないということかな。コロシテ…モウ…コロシテ…。

 ファイト何発かした二人は今では穏やかなピロートークをしている。また子ちゃんが甘えるように晋助先輩の肩に頬を寄せると、先輩はよしよしと頭をなぜてあげる。また子ちゃんは嬉しそうにはにかんだ。
 今日はとっても苦しかったけど、その笑顔を見ると、ぼくも嬉しい気持ちになるのは確かだった。あぁやっぱりまた子ちゃんにはずっとこうして笑っていてほしいなって心から思う。
 ぼくはくまのぬいぐるみ。また子ちゃんの寂しさをひととき埋めることはできるけど、抱きしめてあげたり、なでなでしてあげたり、涙をぬぐってあげたりはできないんだ。
 今まで見てきたまた子ちゃんのことを走馬灯のように思い出した(注:性行為以外)。そして、これから先のまた子ちゃんを想像してみる。
 結婚式にはぼくのことも連れて行ってくれるかな。晋助先輩と新しく暮らす場所にぼくも連れて行ってくれるかな。
 ぼくはもう、きっと、また子ちゃんにとっていらなくなる。もうしかしたら、もうすでに、必要ないものなのかもしれないってことも、わかってるんだ。
 今までたくさん思い出を作ってくれてありがとう。今日の思い出はぶっちゃけ全然まったく必要のないものだったけど。
 また子ちゃんにはたくさん愛してもらえたんだもの。もしきみがぼくを手放すときがきても、ぼくはぜったい、最後までしあわせだよ。
 でももしもわがままが叶うなら、また子ちゃんの花嫁姿、みれたらいいな。おめでとうってお祝いしてあげたいな。そして、また子ちゃんと晋助先輩の間に家族が増えたら、やったねまた子ちゃん!って言ってあげたいな!

〜fin〜

この話の一番のオチは、名前変換機能を付けて名前入力を要求したにもかかわらず名前が一回も出てこなかったところです(自らボケの解説)